デッサン力をつけるには?画家の見方を知ろう

描いても描いても、どうもうまくいかない。デッサンを学ぶ過程で、誰しもそんな時期があります。もちろん、私にもそんな時期がありました。それも、相当長い間です。当時の私は、そんな状況を打破しようとしていろいろとヒントを探し、情報を集めました。

集めた情報の中で、私がデッサン力を上げるための手助けとなったものはいくつかあります。そのうちに一つが、「絵を描くための見方」です。「絵を描くための見方」は、私たちが普段生活する時の見方とは異なります。この見方を知ることで、デッサンが少し簡単になる。私は経験からそう感じています。

このテキストでは、「絵を描くための見方」を、普段生活している時の見方と比較して説明します。そんな見方は知らなかった、という方はぜひ身につけてほしい見方です。

日常的なものの見方

私たちは普段、赤色のチューリップを見たとき、「これはチューリップだ」、「花びらの色は赤」だ、と認識します。図で表すならFig.1のようになります。花びらの部分、葉が何枚、茎が何本、そしてそれぞれの色が何色か、という見方です。

Fig.1 日常的なものの見方

さらに詳しく観察してください、と言われれば、「葉の形は尖っているか?」「花びらの枚数はいくらか?」「どのようなパターンで茎に葉が付いているのか?」という具合に、まるで分析するように見ます。

ものについている名前(花、茎など)ごとに見る傾向があるので、言葉で簡単に伝えることができます。

絵を描くための見方

これに対して「絵を描くための見方」は、形や色などをお互いに比較する見方です。形を見るときは、チューリップの花びらや葉という区別はしません。代わりに、形の長さや角度を比べながら見ていきます。

これを図で表すとFig.2のようになります。一番下の葉が生えてくる位置から、その上の葉が生えてくる位置までを「1」とします。その「1」を基準として、他の長さがどれぐらいかを計測します。例えば、上の葉の生え際から茎の一番てっぺんまでの長さは、「1」の約4倍(4)です。同様に、花びらの部分は約2倍(2)です。

Fig.2 絵を描くための見方

また、茎の一番下から花びらのてっぺんまでを線で結んだ「線分ab」は、垂直線に対してどのぐらい傾いているのか。同様に「線分ac」はどの程度傾いているのか。このような計測を、大きい部分から細かい部分まで、あらゆるところに使って形を合わせていきます。

画家が片目をつむり、筆を持った手を前にまっすぐ伸ばし、その筆越しにモチーフをじっと見ている。そんな姿を漫画などで見たことがあると思います。あれは、筆を使ってモチーフの形の長さを比較しているのです。

これは画塾などでも見かける光景でが、筆ではなく、はかり棒やデッサンスケールなどを使うことが多いです。筆は太すぎて、モチーフが筆に隠れてしまうためです。

> デッサンスケール(デスケル)とは透視枠です
> はかり棒とは、デッサンで形を確認する道具

色も、形と同様に比較して見ます。例えば、花びらの色は単純に「赤」ではなく、葉や茎の色に対してどのくらい色(色相)が違うか、どのくらい明るいか(明度)、どのくらい色が鮮やかに見えるか(彩度)などを比べながら見ます。

さらに、光の当たっている部分と影の部分ではどのような色の差になっているか、を比較しながら色を観察します。

まとめ

デッサン力を上げるためには、「日常的なものの見方」と「絵を描くための見方」、両方の見方が必要です。しかし、私がそうであったように、デッサンがうまく描けない人の中には「絵を描くための見方」を知らない人がいます。

もしあなたがそれに当てはまるなら、「絵を描くための見方」を知り、それを意識して描くことでデッサン力が向上するでしょう。

「絵を描くための見方」のコツは比べることです。先ほどの「1」という長さや、垂直線などの基準を作り、それと比較して形の長さや角度を決めていきます。色も同様に、どこかに基準の色をピタッと定めて、その色と比較しながら他の色を決めていきます。

めんどくさいと思って自分の感覚で形を描いたり、だいたいの目測でデッサンをしたりすると、形が狂います。はじめのうちに丁寧に形や色を比べる癖をつけましょう。

最後に、「絵を描くための見方」に関連するテキストを以下にあげておきます。

> デッサンで正確に形を取る基本的テクニック
> デッサンで形を合わせる方法。三角測量のコツ
> ヴァルール(バルール)は写実デッサンのコツ
> デッサン初心者でも形が合うようになる練習