「デッサンスケール」という、「デスケル」と略して呼ばれることもあるデッサン用具があります。これは「透視枠」の一種で、ホルベイン画材株式会社の商品名として有名です。
他のメーカーから発売されている似たような名前、形をした商品も用途はほぼ同じです。デッサンスケールと使うことによって、写実デッサンの際に構図を決定したり、形を正確にとったりすることが簡単にできます。
また、このテキストでは透視枠がプリントされた板全体を指す場合は「透視板」と言っています。
デッサンスケールのメリットとデメリット
「デッサンスケール」は小型で、持ち運びしやすく、集団でデッサンする中でも使いやすいというメリットがあります。
透視枠自体は、15世紀にアルブレヒト・デューラーが使用していた痕跡が残っています。デューラーが使用していた透視枠は大型の装置でした。このような装置を使えば、透視枠が対象からずれることなく、安定した像を支持体(紙やキャンバス)に写し取ることができます。
ただデッサン教室など集団でデッサンする環境では、このような大型の透視枠を使うのは難しいです。そういった環境では小型のデッサンスケールを使う方が現実的です。
デッサンスケールのデメリットは位置が定まりにくいことです。手で持って使うため、描き手の視点と対象の位置が無意識のうちにずれてしまいます。
これを解決するためには「デッサンスケールの中心が対象のどこにくるか」と「視点とデッサンスケールの距離を同じに保つ」を意識する必要があります。そうすることで、透視枠をいつも同じ位置にくるようにします。
また、透視枠を頭につける方法もよいでしょう。
透視枠の種類|D、B、F
ホルベイン社のデッサンスケールは透視板全体の外寸法が115×140mmです。この透視板には格子状の黒い線が印字されており、この枠部分が「透視枠」となります。
デッサンスケールはいくつか種類があります。それぞれ、透視枠の縦横の比率が違っており、支持体(紙やキャンバス)の寸法に合わせて選びます。
「デッサンスケールD」
木炭紙を使って描くときに使うタイプです。木炭紙は、木炭紙大(木炭紙判)という500×650mmのサイズで売られていることがほとんどです。また、その倍の大判サイズもあります。「デッサンスケールD」はこれらの比率と同じ透視枠になっています。
「デッサンスケールB」
支持体の比率が1:√2(約1.414)のものに使います。例えば、B3やB4などのB列、A4やA5などのA列のサイズです。B列とA列の規格は日本独自のJISと国際規格のISOがあり、若干サイズが違います。しかし、比率は同じ1:√2(約1.414)ですので、どちらにも使えます。
「デッサンスケールF」
F列、P列、M列のキャンバス、パネル全てに使うことができます。例えばF15号のキャンバス、P20号のパネルなどです。「デッサンスケールF」は格子窓の比率がF列の比率に合わせられています。P列とM列に関しては、F用の透視枠の中に、それぞれに該当する線が印字されています。
キャンバスに使うときの注意点
キャンバスの比率には注意が必要です。例えば、日本製のキャンバスは同じF列であっても号数によって比率が異なるからです。
日本で製造されているキャンバスは、明治期にフランスのキャンバスサイズの規格を元に作られました。しかし、当時フランスで使われていたメートル法を尺貫法に置き換えて製造し、のちに、更にそれをメートル法に置き換えたため、元のフランスのキャンバスサイズとは違うサイズになってしまいました。
号数が小さいうちは、比率の違いによる誤差はあまり感じません。しかし、号数が大きくなるほど、その誤差が目立つようになってきます。
20号を超えるキャンバスを使う場合は、自分で厚紙などを用いて透視枠を作る方がよいかもしれません。または、フランス製のキャンバスを選択するのもありだと思います。
参考と脚注
株式会社シロキウェブサイト「紙の規格寸法」(閲覧日:2015年9月)
株式会社世界堂ウェブサイト「キャンバスサイズ一覧」(閲覧日:2015年9月)
ちよだ画材WEBSHOP「豆知識」(閲覧日:2015年9月)
※1
アルブレヒト・デューラー(神聖ローマ帝国:Albrecht Dürer)
1471─1528