※予備校生、受験生向けの本ではありません。
受験合格のためのデッサンにはスタイルがありますので、受験生は予備校に通うことをおすすめします。
この本は初心者、かつ社会人向けとなっています。
主に欧州の古典スタイルを採用しています。
あらまし
デッサン・ラボラトリーでは2018年に一度、Kindleで『写実的なデッサンを描くためのシンプルなプロセス』という電子本を出版しています。
それから5年が経ち、本書は前書でご紹介した内容のアップデート版となっています。また、前書の初歩的な内容を超えて多くの「人物画に挑戦したい」という方々の声に応える内容です。
『写実的なデッサンを描くためのシンプルなプロセス』の中で使ったモチーフは静物で、耳の石膏模型でした。いわゆる石膏デッサンと呼ばれるものの初歩に当たります。対して、本書では人物の顔を描くことに徹底的に焦点を当てています。しかし、描き方のプロセスや個々のテクニックは前書の静物と多くが共通しています。
「…モチーフが変わっただけ?」と思われるかもしれません。
今回新たに本書を執筆したのは、少しの予備知識を押さえるだけで、前書で学んでいただいた技術が人物画でもそのまま通用することを、実習を通じて知っていただきたいからです。つまり、本書のタイトルは描き方となっていますが、本当に大事なのは個々別々の描き方ではなく、シンプルな基本なのです。
とはいえ、いきなり人体すべてを扱ったり、群像を描いたりするのは、多少写実デッサンに慣れていてもかなりの難しさが伴います。したがって、本書では誰にでも親しみがあり、かつ強い興味関心の対象である「人間の頭部(その中でも顔)」に的を絞り、敢えて描き方を示しています。
そして、読者の方々には、前書から一貫している基本に改めて触れていただき、基本により深く親しんで欲しいという思いがあります。
ただし、何の予備知識も無しにいきなり人物画に挑むと、どんなに写実デッサンに慣れていても、多くの場合うまくいかないことはがあります。これは静物デッサンだけを繰り返して上達した方なら、経験があるかもしれません。美術大学の専科で言えばデザイン科や工芸科など、人物画を探求する分野とは疎遠の分野に進んだ場合に、しばしばこうした問題に直面することがあります。
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芸術一般カテゴリーと芸術教育カテゴリーで1位に、絵画カテゴリーとデッサンカテゴリーでも2位に入りました!
以下にまえがきともくじを紹介します。
まえがき
本書を手にとっていただき、ありがとうございます。デッサン・ラボラトリーのミカと申します。
デッサンのプロセスでつまずいている、どう描き進めればいいのかわからない、という方は少なくありません。
特に、自分の身の回りでデッサンがうまい人がいない、独学でデッサンをしているという人は、デッサンのプロセスは予想すらつかないこともあります。
逆に、誰かのデッサンを見ることができる環境にいる人は、デッサンのプロセスを知ることができます。それだけでもデッサン上達の助けになるでしょう。
つまり、人のやり方を見て真似をするのは上達への近道なのです。
今回は、私のデッサン力を底上げしてくれたあるプロセスを、チュートリアル(基本操作などを教えるプログラム)として公開します。動画も準備しました。
私にもデッサンが下手くそな時期がありました。この時の私は、独りよがりな自分流のデッサンをしていました。
画面の中は統一感がなく、形を追ったり陰影を追ったり、そうかと思えばタッチで立体を描き起こそうとしたり・・・。
しかも、それをその時の気分や単に気になったという理由で、きちんとした根拠もなく行っていました。
結果は散々なもので、後から画塾(美大・芸大受験のための予備校)に入ってきた人に追い抜かれていく有様です。
しかし2浪していた時、私はある描き方のプロセスを見つけます。正確には、「自分で見つけた」と感じただけです。
というのも、このプロセスは私だけが行っている特別なプロセスではなく、昔からあるものだったからです。なんら珍しい描き方ではありません。
この描き方をするようになってから、私のデッサンの結果は良くなり、しかも安定しました。
そのおかげで無事、公立の美大に入ることができました。ただ、このプロセスをもっと早く取り入れていれば、美大合格のために2浪もする必要はなかっただろうなと思います。
自分の目的地はどの方向にあるのか、それすらわからない状態では無駄に長い旅路になってしまいます。
しかし、今回公開するチュートリアルをコンパスとすれば、目的地である「デッサン上達」へまっすぐ向かうことができるでしょう。
ただ、現実はやはり予定通りとはいきません。道の途中で思わぬ障害につまずくでしょう。そこで、私が想定できる範囲内で、その障害に対する対応策にも触れてあります。
それらも手がかりとしながら、デッサンのプロセスを学び、「デッサン上達」への歩みを進めてください。それでは、あとがきでお会いできるのを楽しみにしています。