はかり棒とは、デッサンで形を確認する道具

「はかり棒」は目の前のモチーフの形を正確に計測したり、検証したりするために使う補助器具です。

はかり棒には細くてまっすぐな棒を使います。例えば自転車のスポークなどです。画材メーカーは、目盛りのついた細い金属棒などをはかり棒として販売しています。

はかり棒を使うと客観的で正確な形を計測できます。また、描き手の直観に頼った計測がいかに不正確かを明らかにします。はかり棒を利用して描き手は自分の感覚のずれやくせを自覚し、それを修正していくことで、直観による計測力を鍛えていくことができます。

はかり棒として使える条件

以下に挙げる4つの条件を満たしていれば、いずれもはかり棒として使うことができます。

①まっすぐで歪みがない
②硬く、曲がったりしなったりしにくい
③長さが150mmから300mm
④細い|細いほどよく、5mmでも太い方

これらの条件にあてはまるもの例は、自転車のスポーク、細い金属パイプ、太めのピアノ線などが挙げられます。

また、はかり棒としては使いにくですが、即席の代用品として鉛筆を使うこともあります。

はかり棒で計測力を育てる

モチーフを見た目そっくりに描写しようとするとき、初学者が直観的に計測を試みてもなかなかうまくいきません。通常、日常の生活ではものの形を正確に計測したりはしていないからです。日常ではものの意味や役割がわかれば十分です。

信号機の形を例にとります。その縦と横の比率がどれぐらいで、どこが直線でどこが曲線で、ランプの傘の長さは…という風に、私たちは信号機を見ません。「あれは信号機だ」「赤だから止まらなきゃ」という風に見ています。

日常で見る多くのものに対して私たちはそのような見方をしているため、計測力は鍛えられていないのが普通なのです。

ただ写実的なデッサンを行うにあたっては、基礎的な能力のひとつとして目で形を計測する力が必要です。そしてその点を補ったり鍛えてくれたりするのがはかり棒です。

はかり棒でしっかりと計測すると、自分の直感にしたがって描いた形がいかに狂っているかがわかります。これを繰り返すことで、直観に基づく観察ではなかなか見つけることができなかった実際の形をより正しく把握することができるようになっていきます。

ちなみに、はかり棒によって調べられる内容は、原則「比率」と「点と点とを結んだ時の傾き」の2つです。そしてこれらが正確に合えば、概ね形を合わせることができます。

はかり棒を使うタイミング

はかり棒は、描き手の直感で測った後、つまり目測で測った後で使います。はかり棒を使って自分の計測のずれやクセを見つけることで、目測による計測力を鍛えていくためです。

実際に目測で形をとった後にはかり棒で計測してみると、ずいぶん形が狂っていることに気づきます。ただ、どういった風に狂っているのか、その傾向は、多少の個人差があります。例えば、いつも横幅を過小ないし過大に見積もってしまう、奥のものを実際より大きく描いてします。いつも〇〇を見落としてしまう、などです。

デッサンの経験が浅いほど、間違いの頻度も程度も大きいでしょう。これを克服するために、まだ経験が浅い内は積極的にはかり棒の助けを借りながら、描いている形の妥当性を逐一、確認するようにします。

これを繰り返すうちに、ゆくゆくは目測でもそれなりに形を合わせることができるようになります。