構図はテーマによって決めるのが基本で、これは構図を考える上で軸となる最も大切なポイントです。テキスト「デッサンでよい構図とはテーマが伝わる構図」ではその理由を説明しました。
それとは別に、実際の制作では構図に関する多少の知識が必要になります。例えば、構図を視覚的によいと感じるバランスに仕上げることも重要です。これは造形的な美しさに関係します。
このテキストでは、構図を視覚的に心地よいバランスにする、という点から見ていきます。
1. 視覚的なバランスに影響するもの
構図を心地よい見た目にするには、実際に画面に描かれている色や形のバランス、力関係をリズムよく扱います。
そして、そのための具体的な要素に以下のものが挙げられます。
- 色(明暗)
- 形
- タッチ
- マチエール
1-1. 色(明暗)
色(明暗)は画面内の要素で最も構図に影響を与えるものです。色は、形よりも先に目に飛び込んでくるからです。
これはキアロスクーロを考えるとわかりやすいでしょう。光と影のダイナミックな演出は、画面内のモチーフの配置に匹敵するほど構図に影響を与えます。
色を使って構図を考える場合、光と影を使ったり、同じ系統の色を繰り返し使ったりすることで心地よいリズムを作ります。
光と影のリズムは、白黒だけで描くときなどは特に効果が強く出ます。
1-2. 形
これは画面内に描くモチーフの形のことです。
構図を考えるときには、モチーフの外郭線を捉えて構成すると、バランスが考えやすくなります。これは構図を考えるときの基本的要素となります。
例えば、画面内をモチーフでどう埋めるか、構成するかを、外郭線を使って「地と図」という視点から考えます。すると、平面作品としての視覚的な心地よさやリズムを作ることができます。
構図について書かれた本の多くは、この形をどう配置するかについて述べています。それほど、形というのは構図に大きな影響を与える要素です。
1-3. タッチ
タッチは作者が意図的に残した画材の跡のことを言います。タッチでも構図のバランスを調整することができます。
例えば、短い線が集まったところと長い線が集まったところでは、その印象や視覚的なバランスが随分と変わってきます。それを利用して構図に動きをつけることが可能です。
タッチは色(明暗)や形を補強するのにも便利な要素です。
1-4. マチエール
マチエールは表面に現れている画材の状態のことを言います。
例えば、鉛筆ならただ鉛筆を乗せただけの粒子の荒い状態や、擦れて紙の目に粒子が入り込んだ状態などです。
このマチエールの差で、視覚的なバランスをとることができます。手前のモチーフに対しては粒子を荒めにしたり、影の中はしっとりと見せるために粒子をすり込ませたりすることで、視覚的なメリハリをつけるのです。
一辺倒なマチエールは単調で、面白みに欠ける傾向があります。普段のスケッチや落書きなどでも、マチエールを意識して使う癖をつけておきましょう。
マチエールは色(明暗)や形とは少し違い、構図の大きな傾向を決めるよりも、アクセントとして使いやすい要素です。
2. 要素を使って美しいバランスを作る
視覚的に心地よい構図を作るには、「色(明暗)」「形」「タッチ」「マチエール」をリズムよく、バランスよく構成します。
ただし、このバランスは大変感覚的なもので、理論化は難しいです。こうすれば必ずよい構図になるという保証付きのルールはありません。
そのため、あなたがバランスのよい、心地よい構図を作るには、とにかく実践を積むことで構図に対する感覚を磨いていくことになります。そのための練習方法を、以下のページに紹介しています。
参考と脚注
※1
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(イタリア:Michelangelo Merisi da Caravaggio)
1571─1610
※2
長谷川等伯(日本:はせがわとうはく)
1539─1610