描くものを絞ればデッサンはうまくなる

「自分が描くデッサンがごちゃごちゃしている」 「描くことが多すぎて困る」とあなたが悩んでいるなら、解決方法は単純です。

制限時間の中でできることだけを選んで描く、これだけであなたのデッサンは今より良くなります。

行き当たりばったりのデッサン

実は受験生の頃の私は、いつもモチーフのボリュームに圧倒され、「描かなくてはならないことがたくさんありすぎる!」と焦ってしまうことが多く、あれもこれもと描こうとしてデッサンを破綻させていました。

焦ってあれもこれも描かれた私のデッサンは、狙いが全く定まっておらず、こっちでは色を再現し、あっちでは立体感を出そうとしていました。しかも、それぞれを画面の全てで行わず、部分的に行うという有様でした。今思えば、ちょっとしたパニック状態です。

その結果、デッサンで最も重要な相対性が完全に壊れてしまい、画面の中に秩序がなく、めちゃくちゃなデッサンになっていたのです。

あなたにはそんな悲劇を味わってもらいたくありません。そのためには、デッサンを始めるその前に、何を表現するのか、それをしっかり絞りましょう。

私の成功体験

ある日、私は白い台の上にある、曲げられた3本の針金のハンガーを鉛筆でデッサンすることになりました。制限時間は6時間、画用紙のサイズはB3でした。

私はそのモチーフを見たとき、「石膏像や人物を描くときより描くことが少なくてすむ」と思ったのです。

そうした心の余裕からか、デッサンを始める前に私は落ち着いて「今回のデッサンの狙いは?」を考えました。

そして、私は「今回はこのハンガーの距離感と空間をしっかり表現しよう」と考え、実際、それを描き出すことだけに集中しました。

また、「距離感と空間を出すためには、ハンガーが曲がったところにできた頂点の位置をしっかり合わせ、色のコントラストの強弱でそれを描こう」とも決めました。

ただそれだけのことなのですが、結果は上々で、講師からはその日描いている人の中で一番の評価をもらいました。(Fig.1)

Fig.1

描き始める前に狙いを絞る

私が色のコントラストで描くと決めたように、手法をきちんと絞り、それを画面の隅々まで徹底すること。

形を絶対に合わせると決めたら、あっちははかり棒で計測し、こっちは感覚で計測する、というのではなく、まずは感覚で描き出し、その後全てを一度ははかり棒で計測すること。

大切なのは手法の一貫性です。

一番まずいのは、あれもこれもと欲張って全てを中途半端に表現することです。時間制限があるのなら、何をして何をしないのかを最初に決めてください。

そして、基本的には、形を合わせ、色の相互関係をしっかり合わせれば、大体のものは描けます。ですから、とにかく形をしっかり合わせ、色のコントラストとトーンを合わせることだけに集中すれば、あなたのデッサンは上達します。

> 「画面全体でトーンを考えるのがデッサンのコツ」
> 「コントラストの操作でデッサンの表現力が上達」