画面全体でトーンを考えるのがデッサンのコツ

画家は、自分の表現の意図を鑑賞者に伝えるために、絵の印象を操作します。いろいろな方法の中で、比較的よく使われるのは「トーン(色調)」を調節することです。

トーンを自在に扱えるようになると、デッサンの表現力はぐっと上がります。トーンをコントロールすることで、季節感や温度感なども表せるようになるからです。

デッサンでトーンとは

「トーン(英:tone)」とは調子のことです。調子とは、具合や加減を表す言葉で、例えば次のように使います。

滑らかな調子で話す、厳しい調子で非難された、浮かれた調子でやってきた、体の調子が悪い、音の調子を合わせる、彼は調子に乗っている、などです。

美術の分野でトーンという場合は色の調子・色調のことを指しています。

主に色がどのくらい「明るい/暗い」かを表す「明度」と、色の「鮮やか/濁り」具合を示す「彩度」、それらがどのぐらいか、その程度を表す言葉となります。

Fig.1は美術教育者で画家だったマンセル※1が考案したマンセル表色系です。

Fig.1 マンセル表色系(R) 縦軸:明度 横軸:彩度

画家はこの表にある色や相関図を厳密に暗記する必要はありませんが、明度と彩度のイメージはなんとなく把握しておいてください。

また、知識で知っている以上に、実際にこれらの色を画材で作れるスキルが画家には必要です。

トーンは環境で見え方が変わる

Fig.2を見てください。左右の四角の真ん中にある灰色は両方とも同じ色ですが、不思議と違う色に見えます。わかりにくい場合は、左右の四角をつないでいる部分を指で隠してください。

Fig.2

これは、私たちが色を判断するときに、周りにある色と比較しているからです。

このことから、トーンをコントーロルするためには、モチーフそれぞれの絶対的な固有色よりも、画面全体のトーンの調整が重要だということがわかります。

もっとも単純な例だと、あるモチーフを明るく見せたい場合には、その周りに暗いモチーフを用意したり、周りのモチーフを実際よりやや暗く描いたりして、目的のモチーフを明るく感じささせます。

画面全体のトーンを調整する方法は大きく2つあり、画面全体の明度または彩度を上げたり下げたりする方法と、コントラストの強弱を調整する方法です。これらの方法については以下のテキストで詳しく説明しています。

> 「トーンのコントロールでデッサンの表現力UP」
> 「コントラストの操作でデッサンの表現力が上達」

参考と脚注

※1
アルバート・ヘンリー・マンセル(アメリカ:Albert Henry Munsell
1858─1918