コントラストの操作でデッサンの表現力が上達

「コントラスト」はデッサンで必ず発生する効果です。これをうまく利用することで、動きや立体、遠近を表現することができます。

このテキストではコントラストについての説明と、コントラストを使った表現の例を紹介します。

コントラストとは

「コントラスト(英:contrast)」とは、「対比」「画面上で、ある色やある形の違いやその差」を意味します。そして、その差が大きいときはコントラストが強い、逆に小さいときはコントラストが弱いと表現します。

美術分野で使われるコントラストという言葉が焦点を当てているのは、ある色と別のある色の差がどれぐらいか、ある形と別の形の差はどの程度かというものです。つまり、比較を前提としています。

コントラストは色や形だけではなく、線にもあります。さらに、それらをどこに配置するか、いわゆる構図にもコントラストはあります。

そのため、色を2色置く、線を2本引く、それらを画面上に配置する、それだけでコントラストは勝手に生まれます。つまり、ほとんどのデッサンにはコントラストが存在します。

そして、コントラストがあることによって、画面に動きが生まれます。それはまるでシーソーのようで、そのバランスによって止まっているように感じたり、動きを強く感じたりします。

線の太さによるコントラスト

Fig.1は「線のコントラスト」をわかりやすく示したものです。線の太さ、濃さ、直線と曲線、長さ。線だけでもいろいろなコントラストが作れます。

Fig.1

線のコントラストを使った代表的な描画の例は紙幣です。ぜひ、あなたが持っている紙幣を取り出して見てみてください。

紙幣を取り出したら、そこに印刷されている人物の陰影に注目します。すると、光が当たっている部分は細い線で、陰影になる部分は太い線で描かれています。そしてこのコントラストを使って、見事に立体感が表現されています。

線の形のコントラスト

今度は線の形、直線と曲線のコントラストの例を挙げます。

Fig.2は、人物を数本の限られた直線と曲線だけで描ています。人物が直立している場合は、線の形は概ね左右対称の線となり、コントラストが弱く感じられます。

Fig.2

しかし、人物が片足重心のポーズに変わると、直線と曲線は左右どちらかに偏るため、先ほどと比べてコントラストがやや強くなります。また、動きもより感じられるようになりました。

また、人物だけでなく、構図を考える際にも直線と曲線のコントラストを使うことができます。

画面内で直線と曲線を左右対称にバランス良く配置すれば安定した印象になりますが、左右非対称に配置すると、それだけで動きが生まれます。

色のコントラスト

最後に色のコントラストの例です。

色のコントラストが強いと、その部分が手前に迫ってきて見えます。逆に弱いと、霞んでいるように見え、その部分が遠くにあるように感じます。そして、これは空気遠近法の一種として使うことができます。

空気遠近法は、遠くあるものは霞んで、かつ青みがかって見えることを利用して奥行き感を表現する方法です。具体的には、遠くの対象物をぼかす、またはコントラストを弱くして描いたり、遠くにある対象を大気の色に近づけたりして奥行き感を出します。

仮に、あなたが「遠くにあるものだけどしっかり描きたい」という時は、遠くのものの色のコントラストを弱くすることで、それをしっかり描いても遠くにあるように見えます。