とても素速く描くことで、あなたが描いている最中に何かを考えることができないような状態にします。
例えば、「形はあっているかな?」「うまく描けているかな?」ということを一切考えさせずに、描くこととそのものに集中させます。そうすることで、観察力や感受性など、自分の力の限界を突破していきます。
また、見たり考えたりしているだけではわからなかったことが、描いてみれば明らかになることがあります。この感覚も、素速く描く練習をする中でわかってきます。
1. 練習の内容
・制限時間:5分(1ポーズは10〜30秒。これを5分間繰り返す)
・目的:素速く描けるようになる
・行動:素速くモデルを描く
テキスト「デッサン上達のコツは素速く描いて鍛えること」を読んでからこの練習を行ってください。
1-2. モチーフの準備
街中や職場、校内でたまたま目に入った人をモデルにします。
1-3. 手順1
この練習では手元の紙は一切見ずに、終始人物モデルだけを見て描画します。文字を殴り書きするような速さで、線を途切れさせず、しかも、手を止めてはいけません。
例えば、あなたが目の前を歩いているモデルを描くと決めたら、とにかくそのモデルの手がかりとなるものを紙に線で残します。ジェスチャー、形、動き、なんでも構いません。
見ることと手の動きをシンクロさせる感覚で素速く線を引き続けてください。
形なんてどうなっていても構いません。ぐしゃぐしゃでもいいので、とにかく手を動かします。あなたの手が動く速さに、観察を追いつかせるぐらいの意識でいいでしょう。
1-4. 手順2
10〜30秒たったら、モデルを変えて手順1を何度も繰り返します。
2. なぜ線を途切れさせないのか?
線を途切れさせないということは、描き続けるということです。それによって、描くこと自体が観察につながる、という体験をあなたにしてもらいます。これは言葉で表すのが難しいのですが、何度も行えば、なんとなくその感覚がわかってきます。
見たり考えてたりしているうちは知らなかったことが、描いてみれば明らかになることがあるのです。
また、勢い余って予期せずに紙から鉛筆がはみ出たり、浮いたりしてしまうことがありますが、このような線の途切れ方は問題ありません。
3. 1秒もじっとしていないモデルの場合
あなたが歩いたり走ったりしているモデルを選んだ場合、モデルは1秒も同じポーズでいてくれません。
こんな時は、最初の一瞬でモデルの何かをあなたの記憶に刻み、残りの時間でそれを思い出しながら線を素速く描いてください。
参考と脚注
B・エドワーズ『内なる画家の眼』エルテ出版、1988年
K・ニコライデス『デッサンの道しるべ』エルテ出版、1997年
アラン『芸術の体系』光文社、2008年
※1
レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン(ネーデルラント連邦共和國:Rembrandt Harmenszoon van Rijn)
1606─1669