デッサンをするときに、どのようなモチーフを選べばよいのかと悩む方は多いと思います。効率よくデッサン力を上げるためのモチーフがあれば、それを使いたいと思うのではないでしょうか。
実は、「デッサン力の中で、どの能力を上げるのか」を明らかにすれば、効果的にデッサン力を上げるモチーフがわかります。たとえば、陰影を描けるようになりたいなら白一色のモチーフを選びます。そうすることで、陰影の変化を集中的に観察、描写することができます。
また、デッサンの度に「何を描きたいのか」をはっきりさせておくことで、完成後の自己採点を行いやすくなります。陰影の観察と描写が目的であれば、それがどのくらい自然に描けたかを見ればよいのです。
また、受験を考えている場合は過去の合格作品をリサーチします。その上で、受験校が求めている能力を中心に磨いていきます。
1. 目的を明らかにする
まず、鍛える能力(観察力)を意識してモチーフを選びます。初めから全ての能力を同時に鍛えることはしません。
これは、ピアノ初学者がまずは片手から練習するのと同じです。モーツァルトのような天才は例外ですが、そのような人は滅多に現れません。一足飛びを狙うのではなく、一歩ずづ進めていく方が確実に力がつきます。
デッサン力をあげるために必要な基本的能力は、「形」「陰影」「立体」「質感」「空間と奥行き」の5つです。1枚のデッサンごとに、この中のどの能力を向上させるのかを決めましょう。
どれを選べばいいのかわからない人は、「形」から行うのをおすすめします。
2. モチーフ選び
2-1. 形
形を正確に描くためには、対象の輪郭の位置関係を正しく計る目を養います。たとえば、形の縦と横の比率などです。
これには間違いがはっきりとわかる直線的で幾何学的なものや、工業製品がモチーフとして適しています。ペットボトルやジュースのカンなどです。
他には、円錐や立方体のモチーフ、車、自転車、ワイングラスなどです。見慣れていて、絵を描かない人でも「形が変だ」とすぐわかるモチーフを選びます。
2-2. 陰影
陰影を観察できるようになるには一色のモチーフ、特に白色が適しています。
向いていない例はルービックキューブです。ルービックキューブは色が多すぎて、陰影よりも色の印象が勝ります。白一色のモチーフなら、モチーフについた色が陰影の色だとわかるので、観察が簡単になります。
また、光がよく反射するものも避けてください。たとえば、アルミホイルは陰影よりも反射が目立つので、陰影の訓練には向いていません。
陰影の観察に適したモチーフの例は、美術室にある人物石膏像(石膏で作られた人物像)、白一色のぬいぐるみ、白い布など、モチーフの色が一色のものにします。テーブルの上で描く場合は、テーブルも同じ色になるようにしましょう。
たとえば、モチーフが白くてテーブルが茶色い場合は、白い布や白い紙をテーブルの上に置きます。
2-3. 立体
立体を描写するにはボリュームのある、不透明なモチーフを選びましょう。立体感を出すためには稜線(凹凸の境界線)を暗示する必要がありますが、透明なモチーフは稜線が見えづらいので向いていません。
人物石膏像、円柱などの幾何学立体、大きめのクッションなど、不透明で面が複数できるものを選びます。
2-4. 質感
質感の違うモチーフを2つ以上並べて、それらを比べながら描きましょう。質感の違いは、光の反射の違いで描き分けることができるからです。反射の仕方が大きく異なるモチーフを比べて描くことで、質感の違いを観察しやすくなります。
組み合わせの例は、アルミホイルと紙コップ、金属製のスプーンと発泡スチロールなどです。光を強く反射してキラキラして見えるモチーフと、あまり光沢のないモチーフを選びます。
2-5. 空間と奥行き
空間や奥行きを描くためには、遠近法が使えそうなモチーフを選びます。
たとえば、テーブルの上に柄のあるテーブルクロスを広げ、それをモチーフにします。または、複数の空きカンを、距離を開けてポツポツと台の上に置いてモチーフとします。遠くの山まで見渡せる風景などもおすすめです。
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3. 受験対策のためのモチーフ
美術科への進学を考えている方は、受験校の過去の合格作品、募集要項などから、どのような能力が求められているのかをリサーチしてください。それを念頭に置いたうえで、上のモチーフ選びを参考にしてください。
そしてできれば、受験対策をしている画塾などに通ってください。
なぜなら、受験生には試験日という期限があるからです。のんびり取り組んでいる時間はありませんので、先生についてできるだけ早くデッサン力を上げましょう。
また、受験対策をしている画塾では受験に特化した訓練や、そのためのモチーフが準備されています。