遠近法が苦手な人でもすぐに使える直線の遠近

アラウージョ※1の作品

デッサンで使う遠近の中でも、直線を使ったものはよく知られています。これは一般的に線遠近法、または透視図法と呼ばれています。

しかし、「線遠近法、透視図法がどうも苦手で・・・」とあなたは感じているかもしれません。このテキストではそれらのシンプルなルールを「直線の遠近」とし、紹介したいと思います。

直線の遠近という透視図法の一端を知るだけでも、以前より写実的なデッサンを描けるようになります。体系化されている線遠近法や透視図法へと入っていくのはそのあとでも構いません。

透視図法の入り口として

直線の遠近は一般的には透視図法として体系化されています。これを体系化したのはルネサンス時代の建築家であるブルネレスキ※2とアルベルティ※3だと言われています。

アルベルティ『絵画論』より引用

現在、透視図法は図学の分野で体系化されており、これだけで本になるほど内容に厚みがある技法です。しかし、まだモチーフを描くのもおぼつかないようなうちは、これを完全に使いこなすことを考えるのは気が早いかもしれません。まずは、透視図法の簡単なルールを知り、自分のデッサンを検証するのに利用するのが妥当でしょう。

もちろん、あなたがある程度デッサンができるようになり、より上を目指したいと思った時には体系的な透視図法の習得をお勧めします。透視図法は魅力的なデッサンをするために不可欠とまではいきませんが、これを使うと絵の説得力がぐんと増すからです。

直線の遠近のルール

「対象の輪郭に直線の要素が複数本含まれるとき、それらがあなたから離れるほど、その直線同士の間隔が緩やかに縮小していく」、これが直線の遠近のルールです。

遠くにいくほど、青い直線同士の間隔が狭まっている

例えば、街中のビルにはその外郭線と窓枠など、いくつもの直線があります。この複数ある直線は、あなたから離れるほどお互い近づいていきます。

また、直線が途切れなければ、それらの間隔は最後には0になります。

平らな土地の上に、水平線まで続くまっすぐな線路、その上にあなたはいるとします。線路は2本のレールでできており、レールを縁取る輪郭線は直線です。複数あるレールの輪郭線は、水平線に向かうにつれてその間隔が狭く、近づいていきます。そして、水平線にまで到達したとき、それらの間隔は0になり、くっつきます。

直線の遠近をデッサンに使う

直線の遠近のルールがデッサンで適応されているか、自分のデッサンをチェックしましょう。

例えば、トイレットペーパーやペットボトルを描くときなどは簡単にチェックできます。缶の上の辺が見えている場合、あなたに一番近いのは缶の上の辺です。そして、缶の側面を縁取る2本の輪郭線は、缶の底へいくほどあなたから離れ、同時にその間隔が狭くなっていきます。

直線の遠近はモチーフが一つの場合にも現れる

このように、あなたが描くモチーフの中に直線があれば、直線の遠近を使うチャンスだと考えてください。直線は明確なため、意識して扱えば曲線よりも正確に観察する手がかりになります。

参考と脚注

L.B.アルベルティ『絵画論』中央公論美術出版、1992年

ジェームズ J.ギブソン『視覚ワールドの知覚』新曜社、2011年

> MAU造形ファイルウェブサイト「遠近法」(閲覧日:2017年2月)

※1
ラファエル・アラウージョ(ベネズエラ:Rafael Araujo

※2
フィリッポ・ブルネッレスキ(イタリア:Filippo Brunelleschi
1377─1446

※3
レオン・バッティスタ・アルベルティ(イタリア:Leon Battista Alberti
1404─1472