「動いている人物や動物を描きたい」「外で風景や植物を描きたい」「画面内でモチーフを自由に構成したい」とあなたが思う時、記憶やイメージで描く力が必要になります。
「もっと上達するために、デッサンを記憶で描く」のテキストでは記憶して描くことに焦点を当てました。
このテキストではイメージして描く方法についてお話しします。イメージして描く力をつけることによって、あなたはより自由な表現ができるようになります。
そらんじて描く
今目の前に無いものを描くためには、描くものについての知識があり、それが状況によってどう変化するのかをイメージする力が必要です。
例えば、あなたが友人の歩く姿をそらんじて描くとしましょう。これを可能にするためには、まず、あなたの友人がどのような形をしているかをあなたが知っていて、その形が歩くことでどのように変化するのかをイメージできなくてはいけません。
そして、それがどれだけ鮮明にできるかが、どれぐらい不自由なく描けるかに関わっています。
この能力を磨くためには、自分が知っている形を頭の中で変形させたり、動かしたりするイメージ力を鍛えます。
反対側から見えているものを描く
イメージ力を磨くための訓練では、静物モチーフか、人物の場合は何度でも再現できる簡単なポーズをとってもらいます。
あなたは静物モチーフ、またはポーズをしているモデルに対し、いつものように画材を準備し、描く用意をします。
ただし、あなたが描くのはあなたが見ている光景ではなく、その反対側から見た光景です。つまり、あなたはそこにいながら、反対側から見たらそのモチーフがどんな形をしているのか、それを想像しながら描きます(Fig.1)。
左右を反転させて描く
他にも、こんな訓練方法があります。モチーフやモデルを、あなたが見ている光景から左右反転させた光景を描きます。
この時、目で見たものを機械的に少しずつ反転させるのではなく、頭の中でモチーフをぐるっと回転させるイメージで行ってください。
なぜなら、鍛えたいのはイメージ力だからです。部分的にモチーフを見ながら反転させたのでは効果が小さくなります。間違っていてもいいので、頭の中でモチーフを360度ぐるぐる回転させるようにイメージする力を使いましょう。
描いたものとモデルを比べる
これらの訓練をあなたは難しく感じ、ためらうかもしれませんが、デタラメでもいいので何か描いたあとを必ず残すようにしてください。少しずつでも描くうちに、イメージ力が鍛えられていきます。
大切なのはイメージすることでその力を鍛えることと、描いた結果と実際のモチーフを見て何が違うのか、何の理解と想像が足りなかったのかを反省することです。
反対側から見たモチーフがどんな形かを確認する方法は、描いた後、実際にモチーフの反対側に見にいくことです。
左右反転して描いた場合の確認方法は、可能ならモチーフを実際に反転させたり、モデルに左右を入れ替えたポーズを取ってもらいます。それが無理な状況であれば、スマホで撮影したモチーフを画像加工で反転させて確認してもいいでしょう。
まとめ
紹介したイメージ力を鍛える具体的な手順は以下の練習のページをご覧ください。
また、どうしてもこれらの訓練が難し過ぎてつらい、とあなたが感じた場合は、ウォーミングアップとしてまずは文字を使ったイメージ力の訓練をしてみましょう。それについて以下のテキストで紹介しています。
参考と脚注
K・ニコライデス『デッサンの道しるべ』エルテ出版、1997年