デッサンをうまく描くためにイメージして描く

デューラー※1のデッサン

デッサンを始めたばかりの頃は思ったようにデッサンできず悩むと思います。「うまくなりたい」と思っても、始めたばかりなのでどうしていいのか右も左もわからない状態でしょう。

初心者特有の問題としては、「手がまだ動かし慣れていない」ということもあります。

これに関しては数をこなす他ありません。ただ何もわからないままとにかく描けと言われても「うまくなるんだろうか?」と不安に思うでしょう。

そんな不安を少しでも軽くするために「イメージをしながら描くことが大切だ」ということだけしっかりと頭に入れておいてください。これを意識することで無駄な手数を少なくすることができます。

これから描くものをイメージする

線をひく前に、これから描くものの形や立体感をある程度イメージします。

イメージせずに引いた線はただの記号的な線になりやすく、対象を表す線としては不十分です。

Fig.1はピカソの線です。Fig.2は私が手の形を機械的に追って描いた線です。どちらの線が魅力的か、こうして比べると少しわかるのではないでしょうか。この線の質の差は、しっかり対象を見定めて線を引いているかいないか、イメージがしっかりできた上で引いているかそうでないのかの違いと言えます。

Fig.1

Fig.2

うまいデッサンというのは単に形が取れるとか、色のつけ方がうまいとかそれだけではありません。

対象の形や質感など、鑑賞者が対象をイメージして感じ取れるようなデッサンがうまい(良い)デッサンと言えます。形が完璧にあっていて色も綺麗に塗られているけれど、それほど魅力がない絵というのは、生々しいイメージが伝わってこないからそう見えます。

うまい(良い)デッサンを描くためにはただ機械的に線をひくのでは足りません。対象をしっかりとイメージしながら引き、違っていればそれを直すというプロセスを踏みながら描いていく必要があります。

イメージする訓練

ではイメージして描く練習法を紹介します。

「モチーフを見る→見ないで描く→モチーフを見る・・・」これを繰り返します。ポイントは「描いている時はモチーフを見ない」です。

モチーフを見ている時はその形の輪郭や稜線を、線を引くように目でなぞり、記憶します。描く時はモチーフは見ずに、見たものを思い出しながら紙に描きていきます(Fig.3)。

> 「稜線はデッサンで立体を表すための大切な要素」

それを繰り返すことで、イメージして描くという能力を鍛えていきます。手を描く場合、最初は指の一関節分の輪郭だけなど、短い距離を記憶して描いてみましょう。

慣れてきたら、指一本の片側を一気に記憶するなど、その範囲を広げてみてください。形が狂っていてもあまり気にせず、イメージして描くことに集中します。

くせになるぐらい、繰り返して自然にそうできるようにマスターしてください。

模写を通したイメージの訓練

イメージがうまくできない、感覚が掴めないという方は巨匠の作品を参考にしてみましょう。

ダ・ヴィンチ※2のデッサン

彼らが実際のモチーフをどう線に変えているのか、それを掴んでいく訓練を通してイメージして描く訓練をします。

線には描き手が対象をどう見てイメージしたかが直接現れています。それを感じ取りながら模写することで、イメージしながら描くきっかけを掴みましょう。

ここではダ・ヴィンチとデューラーを例にあげます。自分の手を見ながら、彼らが描いた手と比較してみてください。彼らは手の形や立体感を、どのような線で引いていますか?また、あなたが描いた場合と何が違いますか?

彼らが描いたのと同じ手のポーズを取り、実際に描きながらその違いを確かめてください。そして自分の手を見ながら、それらを模写してみましょう。

慣れないうちはピンとこないかもしれませんが、繰り返し訓練するうちに、イメージしながら描く方法のきっかけが見つかると思います。諦めず、辛抱強くトライしてください。

参考と脚注

※1
アルブレヒト・デューラー(神聖ローマ帝国:Albrecht Dürer
1471─1528

※2
レオナルド・ダ・ヴィンチ(イタリア:Leonardo da Vinci
1452─1519