デッサンで形を合わせる方法。三角測量のコツ

デッサンで「形がどうしても合わない」そういう時はどこの形が狂っているのかをよく検証する必要があります。

ただ、「形が合わないなぁ」と言いながら、同じ方法でもう一度最初から形を合わせても、なかなか形の狂いが見つけられません。そんな時は、違う方法で形を見直した方が形の狂いを発見しやすくなります。

そこで、ここでは検証に適した見方として、「三角測量」を応用したものを紹介します。

三角測量とは3つの点の位置関係を求める測量方法です。その3つの点を線で結ぶと三角形になります。古くから測量や計量学、兵器の照準などいろいろな場面で用いられています。

三角測量は、慣れないうちはちょっと面倒くさいと感じるかもしれませんが、習得してしまえば形の狂いを修正するための便利な方法です。特に、石膏デッサンなど、厳密に形を合わせたいモチーフに適しています。

1. 三角測量を使うときの注意点

デッサンで三角測量を使う場合は以下の4つを守ってください。

これを守らないと、三角測量の効果が出にくかったり、デッサンが仕上がる段階で三角測量をした痕跡が邪魔になったりします。

1-1. 最初の3点はなるべく離れた点を選ぶ

三角測量で計測する最初の3点は、できるだけ離れた点にします。

この最初の三角形がその後に続く計測の土台となります。そして、この最初の三角形の形が小さいと、計測の精度が落ちてしまいます。なぜなら、ある点からある点に伸ばした線の角度の誤差は、短い距離だとわかりにくく、長いと目立つためです。

例えば、目的の点に向かう線の角度が5度ずれた場合、10cm先ではその誤差は目立ちませんが、5m先になるとその誤差はとても大きく感じます。

1-2. 三角測量はあくまでも検証用に使う

三角測量は、あくまでも描いた形が合っているかを確認するための、検証の手段として用います。

なぜなら、描き始めから三角測量を使って形を合わせようとすると、時間がかかりすぎたり構図がずれたりするためです。

そのため、描き始めはあなた自身の感覚にしたがって、大まかな形のあたりをとるようにしてください。

1-3. 点と点を結ぶ線の傾斜の程度を測る

計測するときには点と点を結ぶ線の傾斜をしっかりと計測します。

計測したい点から点まで伸びる線の長さではなく、傾斜の程度を合わせることで点の位置を求めます。傾斜の程度が正確であれば、長さは自動的に決まるからです。

仮に線の長さだけを測っても、結局その後に傾斜を測る必要が出てくるので、二度手間にななってしまいます。

傾斜をできるだけ正確に測るには、はかり棒などの計測道具を正確に扱ってください。はかり棒を持つ手首がぐらつくと、それだけで傾斜が変わってしまいます。

1-4. 三角測量で使う点と線は淡く薄く描く

計測した時に描く点や線は淡〜く薄〜く描いてください。

点とそれらを結ぶ線は、デッサンが仕上がる時に邪魔になる恐れがあります。それらはあくまでも計測のための線で、描画に必要なものではないからです。

そのため、いつでも消せて、消し後も残らないぐらいに淡〜く薄〜く描くようにします。

2. 三角測量の使い方

では実際の手順を追っていきましょう。より正確に計測するためには「はかり棒」など、直線的な細い棒を使います。

はかり棒を使った角度の測り方はテキスト「デッサンで形を測るはかり棒の使い方と注意点」を参考にしてください。

> デッサンで形を測るはかり棒の使い方と注意点

2-1. 目測であたりをとる

まずは目測で、モチーフの形のあたりを画面内に描き出します。

「画面内のどの位置にどれぐらいの大きさで描くのか」「モチーフの最も出っ張っている部分はどこか」これらを意識した上で、直線だけを用いてあたりを付けていきます。

モチーフの出っ張っている部分は、モチーフが布ですっぽり包まれた様子を想像するとわかりやすくなります。

加えて、あなたがそのモチーフを表現する上で重要だと思う形もあたりをつけましょう。この段階はあなた自身の感覚を信じて、気の済むまであたりをとります。

ただし、線は薄く描いてください。

2-2. 基準点を3つ決める

あたりを付けたら、描いた形が狂っていないかを検証していきます。三角測量はここから使います。

あたりをつけた形を四角で囲みます。そして、この四角とあたりの線が接する部分を基準点の候補とします。四角は辺が4つあるので、それぞれの辺に接するあたりの線は4点あるはずです。(Fig.1)

Fig.1

この4つの点のうち、比較的に離れている3点を基準点として決めます。3点が近いと三角測量が正確に使いにくくなります。

2-3. 基準線を作る

基準点3つの中から任意の2点の位置を計測して描画します。この2点を「点a」「点b」とします。

まずは、モチーフの中で点aと点bに当たる位置の傾斜の程度を、はかり棒を使って計測します。そして、はかり棒で測った傾斜を維持したまま、つまり、はかり棒を持った手を動かさずに、腰だけを回転させて、画面の前まではかり棒を移動させ、その傾斜を画面内に薄く描きます。

次に、画面内にあたりをつけた点aと点bを結ぶ線が、先ほど計測して描いた線と一致するかチェックします。一致しなければあたりの方を修正してください。

この線abが三角測量の基準線となります。基準線の長さは画面サイズに合わせて任意で決定します。

2-4. 土台の三角形を作る

基準線abができたら3点目以降を計測して求めていきます。

モチーフの中の点aに当たる位置から、3点目となる任意の点cまでを結ぶ線の傾斜の程度をはかり棒を使って計測します。

そして、そのはかり棒を持ったては動かさず、腰だけを回し、画面内の点aを基点にしてその傾斜を描画します。この時点では点cの位置はまだ決まりません。ひとまず、「この辺りかな」と思う点cよりも長めに線を引いておきます。

線acを求めたのと同じ要領で、今度は線bcを求めます。そうすると、線acと線bcが交わる所ができますので、そこを点cとします。(Fig.2)

Fig.2

さて、これで点a,b,cで結ばれる三角形abcができました。が、ここで安心せずに、もう一度、画面内の三角形abcの形が、モチーフの中の三角形abcと相似しているかをチェックしてください。

それが済んだら、三角測量の土台が完成です。

2-5. 基準点を土台として点を増やしていく

これより後は、3つの基準点を基点として、点cを求めた要領で任意の点を増やしていきます。

あなたがあたりをとった形の位置が適切かどうか、あなたが重要だと思う位置をこの三角測量を使って検証し、その位置を修正してください。

そして、「だいたい形が合ってるな」と思ったら、三角測量を終え、描画を進めていきましょう。完璧に合うまで行う必要はありません。三角測量といえども、完璧には合わないからです。

もちろん、描画を進めた後で「形がおかしいかな?」と感じたら、何度でも三角測量を行ってください。

> デッサンで形を合わせるための三角測量の練習