デッサンをしていて、「立体感が弱いな」とあなた自身が感じたり、誰かから言われたした経験があるのではないでしょうか? もちろん、私もあります。
立体感を表現する方法はちゃんと存在します。それを知り、練習すれば、あなたも立体的な絵が描けるようになります。
立体感を出すためには、トーン(色調)、タッチ、稜線などを使うのが代表例です。このテキストではその中から、トーンを使って立体的にデッサンするコツを紹介します。
やりがちな失敗
トーンを使ってデッサンする際によくやってしまう失敗は、あるトーンとその隣にあるトーンだけを比較して描こうとすることです。これをすると、十中八九、立体感のないデッサンになります。
この見方を私は「近視眼的な見方」と呼んでいます。近くのものしか見えておらず、全体を観察していない状態です。私もこの見方に長い間はまっており、デッサンが頭打ちにあっていました。
立体感を演出するトーンの使い方をするためには、全体を見渡しながら比較するような見方が必要です。例えば、全体の中で一番暗いトーンと明るいトーンを見極め、今描くトーンがその間のどこになるかを比較します。これを「相対的な見方」と呼びましょう。
相対的な見方|立体的なアタリをとる
相対的な見方をするために有効な手段の一つにアタリをとるという方法があります。これは、アタリが対象の全体を暗示するマップの役割を果たす場合に当てはまります。
例えば『ネイサン・フォークスが教えるチャコールで描くポートレート』では、解剖学に基づいた人物頭部のアタリのとり方が紹介されています。
人体の構造に基づいたこのアタリの取り方は、それ自体がすでに立体を暗示しています。それをガイドとしながらトーンをつけることで、描いている最中に「今、私はどんな立体のどの部分を描いているのか」を意識しやすくなります。
立体のマップとなるようなアタリを使うことで、相対的な見方、全体と部分を比較する見方を忘れないようにするのです。
相対的な見方|キアロスクーロ
当サイトで度々紹介しているキアロスクーロも、相対的な見方を促す画法です。というよりも、この画法自体が、まとまった全体を築くことを目的としています。
キアロスクーロはトーン明部と暗部の2つに分けて考えます。そしてこれを崩さない範囲で、部分の描写やトーン調整を行っていきます。そのため、近視眼的な見方に陥りにくくなります。
それでも、相対的な見方を常に意識しなければいつ道を踏み外すかわかりません。それぐらい、相対的な見方は私たちの普段の見方とは異なります。逆に、この見方が自然にできるようになれば、画家の見方が身についている、と言えます。
参考と脚注
ネイサン・フォークス『ネイサン・フォークスが教えるチャコールで描くポートレート』ボーンデジタル、2018年
※1
ジョルジュ・スーラ(フランス:Georges Seurat)
1859─1891