立体的にデッサンする3つの方法

紙という平面に立体的なデッサンをするには知識と工夫が必要です。描いたものは実際にはぺったんこなので、錯覚などを使って立体的に見せたり感じたりするようにします。

初心者はどうしても立体感のないぺったんこなデッサンをしがちです。「もっと回りこむ感じを描くように!」と先生に言われた経験がある方もいるでしょう。

回りこむ感じはどうすれば描けるのか。これは立体的に表現する方法を知り、それを実践しながらその技術を調整していけば次第にできるようになってきます。

ここでは立体的に表現する3つの代表的な方法を紹介します。

トーン(色調)で立体を表す

まずはトーン(色調)で立体を表現する方法です。これは目の錯覚を利用しており、大きく2種類の方法があります。1つは陰影を使ったもの、もう1つはコントラストを使ったものです。

陰影を使うなら、明暗と反射光の関係を正確に再現することで、対象を立体的に見せることができます。

Fig.1を見てください。トルソ(美術用語では「胴体だけの彫像」を意味する)は大きく明部と暗部に分けられています。さらに暗部の中には反射光が描かれています。このデッサンの中だと、お尻の面が下を向いている部分が、一番反射光が目立っています。

Fig.1 Charles Bargue: Drawing Courseより引用

この反射光があるのとないのでは立体の印象はかなり違います。

コントラストを使って前後を感じさせる場合は、手前にあるもののコントラストを強く、奥にあるもののコントラスト弱くします。

風景画ではよくコントラストを利用して奥行きを表現します。石膏像を描くときにもこの手法は有効です。ただし、数十センチしか距離のないものに対してコントラストの差をつけすぎると不自然な描写になるので、コントラストの程度は慎重にコントロールしてください。

タッチで立体を表す

立体を表すタッチを入れることで立体の形を暗示できます。

Fig.2を見てください。左側は、タッチだけで球の形を暗示させています。対して右側は輪郭以外の情報がないため、球ではなく平面的な円に見えます。

Fig.2

このように、陰影やコントラストを使わなくてもタッチを用いて立体を感じさせることが可能です。

稜線で立体を表す

稜線(りょうせん)とは、美術分野では面と面の境界線を指します。一般的には山々の山頂と山頂を結んでいる線のことを言います。

稜線は直線のこともあれば曲線のこともあります。最もわかりやすくシンプルな例は三角錐です(fig.3)。三角錐は6本の稜線と4つの面で構成されています。稜線についての詳細、定義は以下のテキストをご覧ください。

Fig.3

> 「稜線はデッサンで立体を表すための大切な要素」

Fig.2の右側の図ように、輪郭だけで表した対象はぺったんこに見えます。そこで、面の向きが大きく変わる稜線を実際に描き、立体を暗示させます。

Fig.4は石膏像をたくさんの輪郭線と稜線で表したものです。これは陰影をつけなくても対象の立体、どこで面が変わるのか、を暗示しているよい例です。

Fig.4

まとめ

立体を表現する方法として「トーン」「タッチ」「稜線」を紹介しました。これらは単体で使うことができますが、組み合わせて使うと立体の説得力がぐんと増します。

特に陰影と稜線は結びつきが強い要素です。陰影が大きく変化するラインには必ず稜線があるので、注意して観察してみてください。

参考と脚注

Gerald M.Ackerman, Charles Bargue: Drawing Course, Art Creation Realisation, 2011