あなたが「動いている人物や動物を描きたい」「外で風景や植物を描きたい」「画面内でモチーフを自由に構成したい」と思った時、記憶とイメージで描く力が必要となります。
このテキストでは、それらの力を鍛える練習法を紹介します。
もくじ
1. 練習の内容
・制限時間:30分(6分を5回)
・目的:記憶でデッサンする力を伸ばす
・行動:記憶したモデルを描く
テキスト「もっと上達するために、デッサンを記憶で描く」を読んでからこの練習を行ってください。
1-2. モチーフの準備
街中や職場、校内にいる人の中で、立ち止まっている人や座っている人など、動き回っていない人物をモデルに選びます。
1-3. 手順1(3分)
この練習では、モデルを観察している間は決して描きません。
まずは1分間、モデルのポーズ(ジェスチャー)をあなたの体を通して観察し、記憶します。モデルになりきり、あなたもそのモデルと同じポーズをとっている気になりましょう。
次に、その観察したモデルは描かずに、別のモデルを探し、同じように1分間観察します。
そして、2人目のモデルもまだ描かずに、さらに別のモデルを探して、同じように1分間観察します。
これであなたは3つのポーズ(ジェスチャー)を、それぞれ1分ずつで記憶したことになります。
1-4. 手順2(3分)
ここからようやく紙と鉛筆を使います。
先ほどあなたが記憶した3つのポーズ(ジェスチャー)を、思い出し、思い出した順に紙に描いていきます。
描く時間は1ポーズにつき1分です。
思い出せないポーズがあっても、とにかく1分間、紙の上に鉛筆を走らせてください。描いているうちに思い出すことがあるからです。
1-5. 手順3
モデルかポーズを変え、手順1と2を5回繰り返します。
2. ポーズ(ジェスチャー)を思い出せない時
慣れないうちはポーズ(ジェスチャー)を思い出せないこともあるでしょう。その時は適当で構いませんから、とにかく1分間紙の上に鉛筆を走らせてください。描いている最中に思い出すこともあります。
また、「1分経っても結局思い出せなかった」となっても構いません。何度も練習をしているうちにできるようになってきます。何事もそうですが、初めから完全なものができることはありません。
記憶のコツは、モデルのポーズ(ジェスチャー)をあなた自身の体に置き換えて覚えることです。モデルになりきったつもりで、あなたも同じポーズ(ジェスチャー)を取っているとイメージします。
このように、身体感覚とセットで記憶するのは有効な方法です。
例えば、あなたは文字を意識せずにさらさらっと書くことができると思いますが、書こうとした文字がどのような形だったかを意識して書く場合、かえってその文字がわからなくなる、ということがありませんか?
これは私たちが字形への理解よりも、手の動かし方など身体感覚を使って字を記憶しているからです。
3. 慣れたら記憶する数を増やす
あなたが3つのポーズ(ジェスチャー)を容易に記憶で描けるようになったら、4つ、5つと、一度に記憶するポーズ(ジェスチャー)を増やしていきましょう。
参考と脚注
K・ニコライデス『デッサンの道しるべ』エルテ出版、1997年
※1
レオナルド・ダ・ヴィンチ(イタリア:Leonardo da Vinci)
1452─1519