もっと上達するために、デッサンを記憶で描く

デッサンをする際、初心者はモチーフを見て描くことがほとんどです。もちろん、まずは観察力を鍛える訓練をしたほうがいいので、それは問題ありません。

しかし、少し習熟してくると、ある程度記憶とイメージで描きたい場面も出てくるでしょう。

例えば、あなたは「動いている人物や動物を描きたい」「外で風景や植物を描きたい」「画面内でモチーフを自由に構成したい」と思うことはありませんか?

このような時に、記憶とイメージで描く力が必要となります。そして、これは訓練で鍛えることが可能です。

ダ・ヴィンチ※1の素描

どれだけ鮮明に記憶、イメージできるか

記憶やイメージで描けるようになるためには、単純にたくさんのモチーフの形を記憶し、それを鮮明に思い出せる必要があります。

そのためにすることは、とにかく思い出しながら実際に描き、それが描けるのか確認することです。というのも、目の前にあるものをただ観察して描いているうちは、観察して描くことに気をとられているので、ものの記憶はそこまでできません。

知識を覚えるのと同じで、モチーフの形を記憶するためには、記憶する前提で観察し、描くほうがいいでしょう。

知識で記憶する

一般的な傾向がある形態を記憶する場合は知識を活用しましょう。

例えば、人物のプロポーションは年齢、人種、性別といったバリエーションはありますが、そこには一定のルールがあります。このそれらは美術解剖書に載っているので、模写をして形を記憶しておきましょう。

また、工業製品などは比率が違うと露骨に違和感が生まれます。それらをモチーフに選んだ場合、見たまま描くのも大事ですが、実際の形の比率も確認しておきましょう。

瞬間的な記憶はジェスチャーで捉える

一般的な知識で得られる形とは別に、モチーフの一瞬の状態を記憶する場合は、そのジェスチャーを記憶します。

例えば、走っている人や、ジャンプしている人、飛んでいる鳥など、じっとしておらず、一瞬の出来事であなたの感性を刺激した光景です。これらを見たとき、あなたが記憶できるものは限られています。それなら、真っ先にジェスチャーを記憶してください。

なぜなら、人や鳥の形は後で調べることができます。しかし、その時の一瞬の光景は、後から調べることができません。その場の気配を再現できるかどうかは、あなたの記憶力だけにかかっているのです。

そのような光景を描きたいときは、ジェスチャーを捉えてそれを描き出し、そこに知識で得た形を当てはめていきます。

まとめ

目の前にモチーフがない状態で描くには、形を記憶して知っていることと、一瞬のジェスチャーを捉えて記憶できること、この2つが必要になります。

形を覚えるには、記憶する前提でそれを何度も描くことです。

そして、一瞬のジェスチャーを捉えられるようになるには、実際に一瞬しか見られないジェスチャーを描く訓練をします。

以下のページではジェスチャーを記憶して描くための具体的な訓練方法を紹介しています。

> 「記憶でデッサンできるようになるための練習」

参考と脚注

※1
レオナルド・ダ・ヴィンチ(イタリア:Leonardo da Vinci
1452─1519