テキスト「デッサンのコツはルールの再現とシンプルさ」でも述べましたが、巨匠と呼ばれる人たちの多くは物理的なルールや、人が世界を知覚しているルールを見つけ、複雑な世界をシンプルに再現しています。
ドラペリー(衣服の襞・衣文)はとても複雑な様相をしているように見えます。しかし、その様相をそのまま愚直に描いても、魅力的なデッサンになることは滅多にありません。
このテキストではドラペリー(衣服の襞・衣文)を使って、対象をシンプルに解釈する練習を行います。
1. 練習の内容
・制限時間:1〜2時間
・目的:ドラペリーを解釈してシンプルに描く
・行動:ドラペリーをルールに従ってシンプルに描く
テキスト「デッサンのコツはルールの再現とシンプルさ」を読んでからこの練習を行ってください。
1-1. 画材の準備
・B3の画用紙
・2H〜4Bの鉛筆
・練り消しゴム
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画用紙を机の上か、カルトンの上に設置します。描いている最中にずれてしまわないように、画鋲かクリップで固定してください。
1-2. モチーフの準備
一辺が60cm程度で、白っぽい無地の布をモチーフとします。
その布をフックに引っ掛けるか、もしくは壁に押しピンで止めてドラペリーを作ります。(Fig.1)
1-3. 手順1
まず、ドラペリーを描くルールを確認します。Fig.2を見ながら確認してください。
・ドラペリーは「トップ」「サイド」「ボトム」の3つの面に分ける。
・「トップ」は一番明るいグレーで描く
・「サイド」は「トップ」よりも暗い、淡いグレーで描く
・「ボトム」は「サイド」よりもさらに暗い、やや濃いグレーで描く
・面が折り重なって見えるところは、その谷間を最も濃いグレーで描く
1-4. 手順2
ルールを確認したら、あなたが見ているドラペリーを3つの面に解釈し、置き換えていきましょう。
それができたら、ルールに合わせてそれぞれの面に色をつけていきます。3つの面の色はなるべく自然に見えるように、布の色を参考に調整してください。
2. コツは大胆に解釈してみること
慣れないうちは、複雑なドラペリーを上記のシンプルなルールに当てはめて描くのは簡単ではないと思います。
間違っていてもいいので、大胆に解釈してみましょう。そして、解釈をいろいろと試みるうちに、適切な解釈ができるようになってきます。
3. 陰影に惑わされない
この練習ではドラペリーに発生する陰影を考慮していません。と言うよりも、陰影の存在を完全に無視しているのではなく、光が正面のやや上方向から当たっている状況を想定し、色の濃さをルール化しています。
これは練習の内容をシンプルにし、解釈する方法をわかりやすく学んでもらうためです。
4. 解釈の後に写実的にしていく
面を大まかに分けて色をつけただけでは表現として物足りない、とあなたは思うかもしれません。
そんな時は、シンプルに解釈して描いた後に、面と面の境目をぼかしたり、中間色を作って滑らかにつないでみてください。
また、巨匠のデッサンや絵画を参考にすると、ドラペリーの「らしさ」を表現するための様々なヒントがあります。この練習のルールを参考に巨匠のドラペリーを分析して模写すると、さらに自然なドラペリーが描けるようになるでしょう。
参考と脚注
K・ニコライデス『デッサンの道しるべ』エルテ出版、1997年