人物デッサン、モデルとポーズの見つけ方

ダ・ヴィンチ※1のデッサン

目の前にモデルがいない状態で人物を描くとき、「どういうポーズになるのか想像できない」という経験をしたことがあると思います。モデルはどこで見つければいいのでしょうか?

美術モデル(作品の資料となる人体モデル)を自分で雇うことができるのならそれが一番です。金銭的にそれが難しい場合は、クロッキー会というものに参加したり、街中の人物や、映画の中の人物をモデルにします。

このテキストではモデルの見つけ方をいくつか紹介します。

絵画教室やクロッキー会に参加する

絵画教室では美術モデルを描けるところがあります。じっくり時間をかけて描けるので、人物デッサンが上手くなりたい人はぜひ参加してください。人物モデルの日だけでも参加できるかどうか、そこのスタッフに確認してみましょう。

また、クロッキー(速写)会もオススメです。クロッキー会では多くの場合、分単位の短い時間でモデルを素早く描きます。

私が行ったことのあるクロッキー会は、1人のモデルを20人ぐらいで囲んで描きました。モデルさんと運営者に支払う料金をみんなで分けるので、1回2千円で参加することができました。

クロッキー会は絵画教室が運営者として開くことがあります。また、クロッキー会に限定して、定期的に開催しているカルチャースクールもあります。

ミケランジェロ※2のデッサン

街中で人物を描く

街中の人物をモデルにするには、カフェや公園がおすすめです。モデルとなる人は自分がモデルだと自覚していないため、自然な動きやポーズを観察することができます。

カフェでスケッチをする場合は、お店の迷惑にならないようにしましょう。たとえば、コーヒー一杯で何時間も居座るのはマナー違反です。私は「勉強も仕事もして大丈夫」という雰囲気のお店であっても、2、3時間以上いるときは必ず追加注文をします。

公園などの野外なら、落ち着いて描ける場所にします。私の場合はベンチに座り、目の前を通り過ぎる人や芝生の上で遊んでいる親子をスケッチします。

実際に目の前の人物を観察すると、観察することが無限にあることに気づきます。その情報量は、写真や動画から得られるものよりはるかに多いです。

生のモデルは常に動いています。そのため、はじめは描くのが難しいでしょう。慣れるまでは、まず「座っている人」や「似た動作を繰り返す人」をモデルにしましょう。例えば、レジを打つ人、落ち葉を掃除する人、品出しをする人などです。

スポーツをしている人

スポーツをしている人をモデルにすると、日常では観察できないような活き活きとしたポーズを描くことができます。

特に、躍動感や熱気はその現場だからこそ強く感じられます。大きな試合を見に行っても構いませんし、サークルの練習などを見学してもよいでしょう。

現場の臨場感には及びませんが、スポーツを動画で見るのも有効です。動画で見るメリットは、生で見るよりも間近でポーズを観察できることです。撮影しているカメラの位置によっては、肉眼ではなかなかお目にかかれないようなダイナミックなポーズを見ることができます。

特にオリンピックの動画などは画質がいいので、私も時々活用しています。

ルーベンス※3のデッサン

映画やテレビを使う

映画やテレビなどの動画は、動きを観察したい場合に使えます。

映画では、日常で見ることができないようなアクションポーズを見つけることができます。また、歴史映画なら、特定の時代の衣装などの資料にもなります。

テレビでも、ドキュメンタリーやダンス、体を張ったバラエティー番組などの中からモデルを見つけることができます。

そして動画の最大のメリットは、好きなポーズのところで停止できたり、繰り返し再生ができることです。

3Dモデルと写真ポーズ集

あくまでも補助としてなら、3Dソフトで作られた人形のモデルも活用できます。しかし、本物のモデルの代わりにするのは難しいです。光の印象や質感などがそこまでリアルではないからです。

写真のポーズ集は、シルエットとトーンを描写するのに使えます。逆に、立体を表現する場合は向いていない資料です。写真は立体情報が乏しくなりやすいからです。

また、躍動感を表現するのも向いていません。切り取られたポーズはなぜか止まっているポーズに見えるからです。

参考と脚注

※1
レオナルド・ダ・ヴィンチ(イタリア:Leonardo da Vinci
1452─1519

※2
ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーコ・ブオナローティ・シモーニ(イタリア:Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni
1475─1564

※3
ピーテル・パウル・ルーベンス(フランドル:Peter Paul Rubens
1577─1640