フィキサチーフの種類と使い方|作品保護

フィキサチーフ(英:Fixative)は描画材を支持体にしっかり定着させるための液です。メーカーによって名前が若干異なり、フキサチーフ、フィキサチフなどとなります。

描画材は鉛筆も含め、擦ったりすれば支持体から剥離してしまう程度の固着力しかないものがあります。せっかく描いたデッサンが描画材の剥離によって台無しになってしまわないよう、フィキサチーフで保護しましょう。

フィキサチーフで画面の表面を保護することで、描画材の剥落による図像のかすれなどの損傷を防ぎます。

フィキサチーフの成分

フィキサチーフの成分はエタノール、または石油系溶剤などの溶剤と合成樹脂です。溶剤で希釈した樹脂を霧状にして描画材に吹き付けています。

エタノールと石油系溶剤はどちらも空気中に揮発するので、描画材の上には合成樹脂のみが残り、それが描画材を定着させると考えられます。

フィキサチーフは2種類ある

フィキサチーフは固着力の弱い描画材に対して使います。例えば、鉛筆、木炭、水彩絵具、パステル、チョークなどです。通常、インクなど固着力の強い描画材には用いません。使わなくても剥離しないからです。

フィキサチーフには2種類あります。パステル用と、その他の描画材用です。パステル専用のフィキサチーフがあるのは、パステルに染料質の色素を使っている画材メーカーがあるからです。染料はエタノールで滲んでしまいます。そしてフィキサチーフの成分は、上述したように合成樹脂とエチルアルコール(エタノール)です。

染料質の色素を使用したパステルで描いた絵は普通のフィキサチーフをかけると滲んでしまいます。それではせっかく描いた作品が台無しです。これを避けるために、パステルにかけるフィキサチーフはエタノールの代わりに石油系溶剤を使っているパステル用のものを使ってください。

使うタイミングと場所

基本的に、フィキサチーフは絵が完成した後に使います。フィキサチーフで表面を保護した後は、描画、修正がとても難しくなるからです。

例外として、描画中に描画材を強く固着させたい理由がある場合、描画途中でフィキサチーフを使うこともあります。ですが基本は描画途中では使いません。

フィキサチーフ十分な換気のもとで使ってください。先端のノズルからは希釈された合成樹脂が霧状に噴きだします。これは身体には有害なので、うっかり吸い込まないようにするためです。

また、火気の近くや他の人がいるところでは使用しないようにします。フィキサチーフは使用時、霧状になりますから、どんなに気をつけても基本的には数メートル四方に飛散します。

なるべく広い場所でフィキサチーフを使いましょう。屋外がベストです。

フィキサチーフの使い方

フィキサチーフの使い方は2通りです。スプレー缶タイプを使う場合、それから、専用の金属製霧吹きを用いる場合です。

どちらを使うか迷ったなら、手軽なスプレー缶タイプをおすすめします。画材屋でスプレー缶タイプのフィキサチーフを買うだけで、簡単に使えます。

スプレー缶タイプのものは、使用する際に一度、新聞紙などいらない紙に向けて少しだけ噴射しておきます。時折、最初の一吹きの際に液がうまく霧状とならず、支持体の上に液垂れしてしまうことがあるためです。

スプレー缶タイプのものを使う時は、画面から1メートル以上離したところからフィキサチーフを吹きかけてください。こうすると、ムラなく均等に吹きかけることができます。

フィキサチーフの噴射口から近い距離に支持体があると十分に霧が広がりきらず、画面に掛かる定着液の量が局所に集中しがちになります。たくさんフィキサチーフがかかったところとそうでないところでは光沢感に差が出ます。すると微妙に色が変わってしまいまうので、少し離れたところから均等にかけるようにしましょう。

ただ、粉末量の多い箇所(多量に木炭を乗せた真っ黒な箇所など)には、比較的多めに噴霧して画面にしっかりと色を定着させます。

専用の金属製霧吹きを使う場合は瓶に入っている液状のフィキサチーフを購入します。専用霧吹きは息で液を描画材に吹きつけます。

専用霧吹きは金属の棒に穴が開いており、細い方を液が入った瓶に入れ、太い方から吹きます。誤って吸わないように注意してください。

参考と脚注

ホルベイン画材株式会社 ウェブサイト「画用液マニュアル」(閲覧日:2015年10月)

株式会社サクラクレパス ウェブサイト「画材について」(閲覧日:2015年10月)