陰影のところはいつも色を塗りこむ、とは限りません。「明度のコントラストを使って陰影をデッサン」でも述べましたが、陰影は鑑賞者にそれと感じさせることができればよいのです。
ベタッと暗部を塗りつぶさなくても、線で軽快に暗部を暗示することが可能です。
線だけで陰影を表している紙幣
陰影は線で表現することができます。線で陰影を描く最もシンプルな方法は、線の太さ、または本数を変えることです。明るい面にある線は細く(少なく)、暗い面にある線ほど太く(多く)します。
あなたの一番身近にある、線を使って陰影を表しているものは「紙幣」です。財布の中にあればぜひ、今取り出して見てください。
紙幣は線だけで描画されており、塗りの要素はありません。それでも明快な陰影、立体が見事に表現されています。
均等に揃った斜線で陰影をつける
先ほどの紙幣の例では形の表面の凸凹に合わせて線の向きが変化しています。そうすれば、より強固な立体感を表現できます。
そこまでせずに、均等に揃った線で暗部を表すこともあります。ダ・ヴィンチの素描の中で、暗い面を線で描いているものがあります。そこで見られる線は、同じ方向に揃った斜線です。これでも十分な陰影と立体感が表現されています。
どちらがよいかは、そのときどきの描画の目的や美的感覚によって判断します。
参考と脚注
※1
ラファエロ・サンティ(イタリア:Raffaello Santi)
1483─1520
※2
レオナルド・ダ・ヴィンチ(イタリア:Leonardo da Vinci)
1452─1519