陰と影を知ってワンランク上のデッサンへ

レンブラント※1の素描

陰影の仕組みを知っていると、本当に光が当たっているような、自然な再現描写ができます。

また、陰影の現象のルールに沿った描写をすれば、たとえ殴り書きのように描いたものであっても、違和感なく、自然なデッサンに感じることもよくあります。

近世以降、西洋絵画において「陰影」は対象の立体感や実在感を表す上で、とても重要な役割を果たしてきました。このテキストでは、陰影の最も基本的な概念、「陰」と「影」について説明します。

陰(shade)と影(shadow)

陰影について、まず知っておかなくてはならない基本があります。それは、陰影とは「陰(shade)」と「影(shadow)」の2つの概念からなる、というものです。そして、これらは「光がどこからくるのか」と、「光がどれぐらいの幅か」によって変化します。

ここに八角柱に陰影をつけた図があります。八角柱を宙に浮かせることによって、「陰」と「影」の違いが見えやすくなっています。

八角柱についている暗い部分が「陰」、地面と壁についている暗い部分が「影」です。

つまり、「陰」とは光が当たった物体の中で暗く見えなくなったところ。「影」とは、物体によって遮られた光が、その物体のシルエットの形を現したものです。

陰と影を意識して観察

「陰」と「影」の描き分けを意識することは、立体と空間の描写につながり、よりリアリティのある写実へとあなたを導いてくれます。

例えば、陰の輪郭がぼやけているところは形の変化が緩やかなところです。対して、影の輪郭がぼやける理由は光源や陰の輪郭との距離などが影響しています。

「陰」と「影」はお互いに影響が強い関係にあります。そのため、観察で見極めつつも、(混同ではなく)セットで扱うのが自然でしょう。

重なりあった部分は、どこからが「陰」でどこまでが「影」なのかわかりにくなります。しかしこのような場合も、できる限り描き分ける努力をしましょう。

参考と脚注

※1
レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン(ネーデルラント連邦共和國:Rembrandt Harmenszoon van Rijn
1606─1669