ぼやけた影の付け方、描き方|本影と副影

デッサンをしていると、時々「とても見えにくい影」はないですか?

例えば、影が何重にも重なっているように見えたり、ぼやぼやしていて一体どこまでが影なのかわからなかったり…。

実はこれは「副影」と言って、影の中の一部分に光が入ってきているために起こる現象です。副影は、自分の目だけで観察していても、何が起こっているのかわかりにくいです。そこで、この副影という現象がどのような理由で起こっているのかを頭に入れて、観察するようにしましょう。

2つの影、本影と副影とは

まず、本影副影という2つの現象について知りましょう。これらは二重になった影や、輪郭のぼやぼやした影の状態を理解するのに必要です。

本影とは、光が遮られた影のことです。どこからも光が届かない部分を言います。これに対して副影とは、部分的に光が届いている影のことを言います。半影とも言います。

本影は、直射日光に照らされてできた影によく表れます。強い真夏の日差しが注ぐ屋外、そこにあなたがいるのを想像してください。あなたの足元の影、そこには地面の上にはっきりと投げられた影があります。これが本影です。

本影の例

副影は曇り空でよく見られます。先ほど本影の例で想像した光は、強い直射日光でした。これが曇り空になると、太陽の光は直接には地面には届きません。太陽の光は雲の中で散乱します。そして空の中のいろいろな方向から、光が届きます。

雲の中で光が一度散乱することによって、光は一方向からではなく、あらゆる方向から降り注ぎます。すると、影の中に別の角度から来た光が入り込み、影が薄くぼやぼやした様子になります。どこからどこまでが影なのかもわかりにくくなります。

副影の例

副影は、太陽が隠れていれば、青空の日にも見られます。

また、本影はモチーフと地面が接している部分にもできます。モチーフと地面が接しているところが最も暗く、そこから投影の輪郭に向かって徐々に影が薄くなっている現象が一般的によく見られます。

この場合はモチーフと地面が接した最も暗いところが本影で、そこから投影の輪郭に行くほど明るくなっていくのが副影になります。

本影と副影の図説

本影と副影を図説します。下の図をご覧ください。球体はモチーフを、上の横棒は窓から注ぐ光を、下の横棒は地面を表しています。

窓からの光は、点光源と違って幅があります。そのため右端の光と、左端の光の光で、できる投影が違います。この時に、右端と左端、どちらからの光であっても影になる部分を本影と言いますどちらか一方からの光の時のみ影になる部分を副影と言います

次の図の下半分は、本影と副影を上から見た図です。モチーフである球体があると影が隠れて見えなくなるため、球体の影だけを示しています。

本影は、光源が他になければ均一な色になります。対して副影は、本影に近いほど暗く、本影から離れるほど薄くなります。つまり、グラデーションがかかります。すると、上の図のような色の変化になります。(説明のために、一部分だけに色をつけています)

また、曇り空で光が散乱する様子は以下の図で示します。上の横棒を太陽光とすると、球体が地球です。その間にあるモコモコが雲を表しています。太陽光は雲の中で散乱し、雲のあらゆるところから、地球に向かって光を注ぎます。

本影と副影の描き方

まずは本影の描き方です。晴れた日の光の元で描く時は、はっきりと地面に投影された影をそのまま本影として描いてください。ただし、地面からモチーフが離れれば離れるほど、副影が入り込んできます。地面とモチーフの距離が離れると、その隙間に違う方向から来た光が届きやすくなるためです。

つまり、モチーフが地面から離れれば離れるほど、副影の割合が多くなります

そして、これを利用して、物と物の距離を表現することもできます。例えば、静物を描く時。イメージしやすくするために、ライティングを上からではなく、描き手からモチーフに当てていると想定します。

すると、静物の後ろの壁に影が落ちます。この時、その影の輪郭がモチーフの輪郭と同じようにくっきりしていれば、モチーフと背景の距離が近いです。逆に、壁に落ちた影がとてもぼやけている、もしくはほとんど影が見えない状態であれば、モチーフと背景は離れています。

この現象を画面上で利用すれば、落ちる影をはっきりさせることで、モチーフ同士が近いことを表現することができます。もちろん、逆も可能です。

こういった現象を意識で知り、それを踏まえた上で観察、再現すると、説得力のある影を描くことができます。

本影と副影は、目の観察だけで理解して再現するのはとても難しいです。光源の種類、その大きさなどから、どのような影ができるべきなのかを頭でしっかり考える必要があります。

その知識や理解と、見えている現象を照らし合わせながら描くことで、リアリティのある影を描くことができるのです。