ものの動きで奥行きや空間を表す運動の遠近

見ている対象がどう動いて見えるか、その動きの範囲や速度の差によって、奥行きや空間を演出することができます。

この運動に関する遠近のルールは、一般的には平面作品よりも動画作品を作る時に役に立ちます。デッサンで使うときは、タッチや線の長さなどを工夫して擬似的に使うことになるでしょう。

運動の遠近とは

あなたから離れているものはあまり動かず、あなたに近くにあるものは大きく速く動く、これが運動の遠近のルールです。

あなたの視界に映っているものを、まるで映画のスクリーンに映っているように捉えてください。あなたは電車に乗っていて、窓から外の風景を眺めいているとします。あなたに近いフェンスなどは、すごい速さであなたの視界の中を動き、あっという間に見えなくなります。逆に、あなたから離れている山や雲はほとんど動かず、あなたの視界の中に長く留まっています。

1秒の間に、あなたのすぐ目の前を横切るものは大きな範囲を一瞬で移動し、ずっと向こうにあるものはほとんど移動しません。これはあなたが動いている場合も、対象が動いている場合でも同じです。

運動の方向が変わっても問題ない

運動の遠近を観察するときに、あなた(または対象)が動く方向は気にしなくても問題ありません。運動の方向は、運動の大きさや速度から独立しています。

『視覚ワールドの知覚』より引用

あなたが車に乗っているとしましょう。あなたが前方を向いているとき、見えている対象の運動の方向は前から後ろです。あなたの視界の中、はるか前方にポストが見えています。車が前進するにつれて、それがだんだんと、あなたに近くなってきます。あなたとポストが近くにつれて、ポストはあなたの視界の中で大きく速く動くようになり、ついにはあなたの横をすごい速さで通り過ぎていきます。

車の例では運動の方向は前から後ろでした。そして電車の例では横方向の動きを見ました。どちらにしても、あなたから近いものが1秒間の間に速く大きく動き、遠くのものはあまり動きません。

参考と脚注

ジェームズ J.ギブソン『視覚ワールドの知覚』新曜社、2011年