デッサンを上達させるにはデッサンを鑑賞する力が必要です。デッサンを見る目が鍛えられていないと、自分のデッサンのいいところ、悪いところがわかりません。
過去の画家たちはこの目を鍛えるために、過去の巨匠、自分の師匠、先生、これらの人が描いたデッサンをよく見て模写しました。
鑑賞力を鍛えるためには、いいものをたくさん見てそれを模写するのが有効です。目で見るだけでも良さそうに思えますが、実際に真似して描いてみることで初めて発見することがあります。ちなみに、ここでいう「いいもの」とは、すでに社会的に価値があると認められているものです。
文字の線を読み取るように、デッサンの線を読む
私たちは文字を通して線に慣れ親しんでいるため、線の鑑賞は立体や陰影に比べれば難しくありません。
たとえば、私たちは他人の文字を見て、それがどんな速さで引かれた線なのかある程度予想することができますし、その人の性格や書いた時の気分まで読み取ったりします。誰かが怒りに任せてなぶり書きした文字は、あなたにも感じ取ることができるでしょう。
デッサンの線を読み取る時も、その感覚と同じです。速さ、力加減などを意識しながら、描いた人がどんな気分で、何を表そうとしたのかを読み取っていきます。
線を模写をする時は、ゆっくりと引かれた線は本当にゆっくりとなぞり、素早く描かれた線はさっと素早くなぞります。描き手になりきって模写をすると、描き手の表現の意図や思考を知るきっかけになります。そのため、表面の形だけを模写するのではなく、そのような描き手の狙いも感じて描きましょう。
ただし、慎重になりすぎたり考えすぎたりする必要はありません。ここは感覚的に行います。
線を通して鑑賞力を鍛える方法
Fig.1〜4のデッサンはそれぞれ線の質が大きく異なります。まずはFig.1のデッサンの中の線を目で追っていきましょう。
目で追う時に、その線の質に注目してください。例えば、早い、優しい、静か、穏やか、激しい、慎重、なめらかな、暴れている、などです。線の質の特徴は一本の線の中に複数読み取ることができます。
Fig.2の線も同様に追っていきましょう。加えて、Fig.1と何が違うのか、それはなぜそう感じたのか。それを比較してください。Fig.3と4も同じように行います。
目で追ったら、次は実際に模写してみましょう。ただ見るのと実際に描くのでは、必ず違った発見がります。目で見たときに加えて何に気がついたのかをしっかり意識します。
こういった練習を繰り返すと、デッサンの鑑賞力が鍛えられてくるので、自分のデッサンの繊細な表現の効果、魅力について自分で考えて判断できるようになってきます。
参考と脚注
※1
オスカー・ココシュカ(オーストリア:Oskar Kokoschka)
1886─1980
※2
フェルディナン・ヴィクトール・ウジェーヌ・ドラクロワ(フランス:Ferdinand Victor Eugène Delacroix)
1798─1863
※3
レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン(ネーデルラント連邦共和國:Rembrandt Harmenszoon van Rijn)
1606─1669
※4
ベン・シャーン(アメリカ:Ben Shahn)
1898─1969