「ジェスチャーがどういったものなのかよく分からない」、あなたがもしそう思ったなら、「臨書」をしてみましょう。
臨書とは書道分野の言葉で、手本を見ながら字の形や筆運び、配置、全体の気分を真似して書くことです。文字にもジェスチャーがあるので、臨書はジェスチャーを知るよい練習になります。
例えば、教科書などに使われている書体である「楷書」を崩して書いた「行書」は、一見何の字かわからないことがありますが、その筆跡をペンでなぞってみると、「あ!あの字か」とその字が楷書でどれに相当するのかわかることがあります。
同じ字であれば、行書と楷書で形が違っても、その基本的なジェスチャーが同じなので、筆跡に残ったジェスチャーを頼りに何の字かわかるのです。
臨書の準備
臨書を行う場合は、書道の道具を持っていればそれを使います。持っていなければ、水彩用の絵の具と筆で代用しましょう。
臨書をするために、まずは書の手本を図書館やネットなどで探して準備します。手本は原本が一筆書きのものにしてください。レタリングされたフォントなどは、ジェスチャーが掴みにくいので使いません。
おすすめは書家が墨で書いた文字です。書家が書いたものはジェスチャーが見えやすいからです。
また、複数の書家の臨書をすると、それぞれの書家によってジェスチャーが微妙に異なるのでジェスチャー観察の参考になります。
臨書の手本が決まったら、文字を適当に選んで実際に書いてみましょう。
臨書で気をつけること
手本をよく見てください。まず、その文字を書くとき、書家はどんなふうに筆をおろしたのかをイメージします。書家はどれぐらいの力加減で始めの一筆を入れたのでしょうか? また、そこで止まっていた時間はどれぐらいでしょうか?
それを想像したら、あなたもそれと同じ動きで筆を入れます。
そこから筆を動かして線を引きますが、書家はその線をどんな早さで引いたのでしょうか? また、筆は紙に強く押し付けているのか? やや浮かせているのか?
手本の文字は、線が太くなったり細くなったりと変化しています。その墨跡からそれらを読み取り、あなたも同じように書いてください。
注意するポイントは、時の形や配置はもちろん、それ以上に筆運びや全体の気配です。そこにジェスチャーがよく表れています。
そして臨書の後、もしあなたの書いた文字が手本と違う気配になっていたら、もう一度よく手本を見てそれらを感じてください。そして、何となくでもその字らしさを掴めるまで、臨書を繰り返します。
参考と脚注
※1
紀貫之(日本:き の つらゆき)
c.866─945