形を合わせるにはアタリが正確でないといけません。アタリが狂っていると、それを頼りに描く形も狂ってしまいます。そうならないために、私が気をつけているアタリのポイントはたった2つです。
この方法でアタリが取れるようになれば、少なくとも目の前で止まっているモチーフを描く場合、誰でもアタリが正確に取れるようになります。以下にそのポイントを記載します。
直線を使って角度を測る
デッサンでアタリを取る方法としてよく使われるのは、縦横の比率を合わせたり、直角に交わる十字線を引いたり、というものです。しかし、私は「直線を使って角度を測る」という方法を使っています。
角度を測る時は分度器ではなく、測り棒や鉛筆などを使います。これらを使った角度の測り方がわからない場合は、以下のテキストを確認してください。
例えば、コップの口の部分の形は楕円です。しかし、この楕円を描くための十字線を私は引きません。十字線は楕円の縦横の比率を測るのには役立ちますが、その後は何の役にも立ちません。
しかも、十字線というのはコップを横向きにした時に使えない方法です。これは楕円が斜めに傾いた時、十字線上の楕円の輪郭が、楕円の一番飛び出ているところと一致しないからです。
そこで、私はまず楕円を四角で囲ったとして、その4辺に触れる楕円の輪郭4点を探します。要は楕円の一番飛び出している部分です。
そして、その4点のうち最も遠い2点同士を結びます。この時、その結ばれる2点の角度をしっかり測ります。この方が、直角に交わる十字線を使うよりも自然な楕円の形になります。
また、楕円の輪郭は、曲線ではなく直線に置き換えて繋いでいきます。その時に、その直線の角度を正確に合わせながら、結果的に楕円に見えるように描きます。
こうした方が、形の狂いが簡単にわかります。なぜなら、曲線の曲がり具合がどの程度違うのかは見つけにくいですが、直線の角度の間違いは見つけやすいからです。
しかも、コップのアタリとなった線が、後でコップの形の一部となっていきます。
多くの人はアタリをアタリとしか考えていません。しかし、実際にはアタリはそのまま形の描写へと直接つながっていきます。
このように直線を使って角度を測る方法であれば、正確なアタリを取ることができます。
ただ、直線を引くときに定規は使いません。目的はモチーフの角度を画面に再現することで、機械のようにまっすぐな線を引くことではないからです。
しかし、あまりにもぐにゃぐにゃした線しか引けない方は、フリーハンドである程度の直線が引けるように練習してください。
アタリの線はかなり薄く引く
アタリの線は自分だけがわかればいい、という程度にうすーく引きます。アタリの線が濃いと、そのアタリが違った時に修正が大変になるからです。
濃く引いた線を消そうとすると、画面を傷つけます。場合によっては完全に消えないこともあるでしょう。
その上から新しいアタリを引いても、どれが正しいアタリだったのか分かりにくくなります。また、そのような傷や線は完成後にノイズとして見えてしまいます。
そして、デッサンに慣れた人であっても、アタリが一発目から合うことは珍しいです。中級者以上でも、修正を繰り返しながら正確なアタリをとっていきます。
そのため、アタリ線はごく薄く、弱い筆圧で引き、修正しやすいようにしておく必要があります。
また、アタリはどうしても描画と関係のないところに残るものもあります。例えば、アタリ線で大きな形を測る時は、そのモチーフの輪郭の外にアタリ線を引くこともあります。これは描画には関係のない線となります。
これらのアタリ線が濃いと、やはり消す時に画面を痛めたりします。
これらに対処できる一番の理想は、消さなくても描画の邪魔にならない薄い線を引くことです。
そのため、デッサンの出だしはごくごく薄い線で描き進めます。そうして、形に狂いがなさそうだと思ったところから、色付けをしていきます。そうすると、薄く描いたアタリ線は自然と見えなくなってくるので、邪魔になりません。
仮に、残ったアタリ線があったとしても、薄く描かれているなら、画面をほとんど傷めることなく消すことができます。モチーフの外側のアタリ線などはこうして優しく消します。
このように、私が正確にアタリを取るために気をつけていることは「直線を使って角度を測る」「線を薄く引く」の2つだけです。これを徹底すれば、正確なアタリ、つまり正確な形を描けるようになります。