どんな構図にでも、そこから得られる印象があります。描き手のあなたは、それをある程度コントロールして表現できなくてはいけません。
このテキストでは、お題を決めて、それを構図で表す練習をします。また、練習をいくつも行うことで、構図と印象の関係を経験的に学ぶことができます。
1. 練習の内容
・制限時間:15分
・目的:心象を構図で表す
・行動:お題を思い浮かべながら深く考えずに手を動かす
テキスト「デッサンで構図を決める要素。心理的印象」を読んでからこの練習を行ってください。
1-1. 画材の準備
・スケッチブック、またはA4のコピー紙
・鉛筆、またはペン
1-2. モチーフの準備
この練習では使いません。
1-3. 手順1
紙に四角い枠を引きます。形は縦長の長方形です。
大きさは、短い辺が20cm以上になるようにします。
1-4. 手順2
この練習のお題は、「最近あった腹の立つ事」です。
まずは、あなたが最近腹が立った出来事について思い出してください。あなたは誰に腹が立っていましたか? どうして腹が立ったのでしょうか?
それについてよく思い出し、考え続けながら、四角い枠の中でペンを自由に動かしてください。
この時、四角い枠の中に何が描かれているかは気にしません。腹が立った出来事、それに対するあなたの感情に集中し、ペンは適当に動かします。15分間続けてください。
1-5. 手順3
あなたが描いたそのデッサンの印象は、あなたが思い出した感情と大むね一致しているか、そう遠くないものだと思います。
それを見て、具体的に、何がそう感じさせるのかを考えてみてください。
四角い枠の中のどこにペンの跡が集中しているか? どんなタッチか? 右から左、上から下などの動きを感じるか? これらを分析してください。
例えば、左下にペンの跡が集中しているなら、それが抑え込んだ怒りを表しているのかもしれません。力強い線が四角い枠の中のあちこちを走り回っているなら、感情が爆発している様子なのかもしれません。
2. 構図と印象の関係をストックする
この練習を、お題を変えてたくさん行うことで、どのような構図がどのような印象を与えるのかが感覚的にわかるようになってきます。
また、作品のテーマに合う構図はどんなものがいいか、そのおおまかな型があなたの中に蓄積されていきます。
数を実践することによって、感覚的、経験的に、これらの傾向が明らかになってくるからです。
3. お題を変えて行う
お題を自由に変えて、何度もこの練習を行ってください。お題の例は以下に挙げておきます。それ以外にも、あなた自身で考えてみてください。やればやるほど、あなたの構図に関する感性が磨かれていきます。
・今日一番悲しかったこと
・今週最も嬉しかったこと
・鳥が最も鳥らしく感じる動き
・あなたが好きな人の心象
四角い枠も、横長や正方形などに変化させてみましょう。
また、静物デッサンや人物デッサンをするときにでも、制作に取り掛かる前にテーマを決め、簡単なスケッチとしてこの練習でやったことを行い、構図を決める参考にしてみてください。
参考と脚注
B・エドワーズ『内なる画家の眼』エルテ出版、1988年