木炭紙は木炭と相性がよく、木炭のマチエールを最大限に活かせる支持体です。これは紙の表面の
凹凸が大きいためです
木炭デッサンは木炭紙以外の紙でももちろんできます。
ただ、木炭のマチエールの幅広さを経験するためには木炭紙が最適です。木炭でデッサンをするのなら、一度は木炭紙を使ってみてください。
木炭紙の特徴
木炭紙の表面の状態は、木炭のマチエールの幅を出すのに適しています。木炭紙は表面がざらざらしていて一定の間隔で凹凸があり、木炭や鉛筆ののりがよいという特徴があります。
現代の日本では基本的に木炭で描く際の支持体としては木炭紙が用いられます。
木炭紙には裏表があります。表面の凹凸がくっきりしている方、「MBM」「ATELIER」などの文字の透かしが正しく読める方が表です。
「MBM」「ATELIER」などの文字は紙の裏表を見分けるのは便利ですが、端にあるとはいえ描画がそこに重なってしまうことが多々あります。描き手の中にはそれが気になる人もいるようです。その気持ちは私も理解できます。ただ、そのせいでデッサンの価値や見栄えが下がることはほとんどありませんので、あまり神経質に考える必要はないでしょう。
木炭紙のサイズと厚さ
木炭紙は、木炭紙判あるいは木炭紙大と言われる650mm×500mmのサイズで販売されていることがほとんどです。他には650mm×1000mmの大判サイズで売られていることもあります。
美大受験などで一般的に用いられるサイズは木炭紙判の方です。受験で大判を使うにはスペース的にも時間的にも不都合が多いためと思われます。
また、上半身だけの石膏像を描く時も木炭紙判のことがほとんどです。これは、木炭紙判に上半身だけの石膏像が等身大に近い大きさで描けば程よい収まりになるからでしょう。
木炭紙大より小さくなると、画面が狭く、描きにくいかもしれません。木炭紙大ぐらいが初学者にとっても修練になるちょうどよい大きさだと思います。
木炭紙は大きさ以外に厚さも種類があります。厚さはg(グラム)で表記されており、重いほど紙が厚くなります。g数は1平方メートルサイズにした時の紙1枚の重さです。紙が厚いほど、表面の凸凹が大きく、マチエールの幅が出しやすくなります。
ただ、たくさん量を描くのに紙が高すぎると続きません。初めのうちは100gほどの薄い木炭紙をメインで使い、時々厚い木炭紙を試すのがよいと思います。
木炭紙を使うときに下敷きをする
木炭紙を使う際は、カルトンに木炭紙2、3枚を下敷きとして敷き、さらにその上に描画用の木炭紙を1枚敷きます。下敷きを数枚敷くことによってクッションを作るのです。
それによって木炭の粒子を指で木炭紙に押し付ける時に、木炭紙の凹凸を潰すことなく粒子を凹凸の目の中に入れていき、定着させることができます。
木炭紙でデッサンする場合は2、3枚余分に買って下敷きにしましょう。下敷き用の木炭紙は何度も使い回すことができます。
木炭紙の種類
日本で主な木炭紙の種類はMBM木炭紙、キャンソン木炭紙、アトリエ木炭紙の3つです。中でもMBM木炭紙は画塾や美大でよく用いられる代表的な木炭紙です。
・MBM木炭紙 キャンソン社(フランス)
木炭紙の条件(木炭や鉛筆の描画に適している、毛羽立ちや裂けががない)を高い水準で満たしている最高級木炭紙です。鉛筆、絵の具、パステルなど木炭以外の描画材ののりも良いです。木炭紙判は105gと130g、大判は130gの厚さがあります。
・キャンソン木炭紙 キャンソン社(フランス)
紙の凹凸が規則的で弾力性があり、毛が立ちにくく、木炭ののりがとても良い高級木炭紙です。色はMBM木炭紙よりやや白いです。サイズは木炭紙判のみで、100gと125gがあります。
・アトリエ木炭紙 ミューズ(日本)
凹凸の目が荒めで毛が立ちにくく、木炭ののりが良い高級木炭紙です。色はキャンソン社に比べて黄味がかっています。サイズは木炭紙判の107gのみになります。
上述の木炭紙以外にも廉価な木炭紙などがあるようですが、私は使用したことがなく、また使用している人を見たことがありませんのでどのようなものかは紹介できません。
廉価な木炭紙はマチエールの幅があまりでない可能性があります。経済的な事情などでそちらを使う方も、高級木炭紙を1度は使ってみてマチエールの幅の違いを知り、納得した上で使うことをお勧めします。