缶やトイレットペーパーなど、モチーフの中に楕円の形はよく見られます。案外、それを正確に描くのは難しく、なかなか形が合わせられなくて苦労するのは初学者によくある話です。
だからと言って、楕円を描くために図学を習得してからデッサンに望むというのもたいへん遠回りです。楕円が描けないためにデッサンでつまずく、ということがないように、コツやポイントを知っておきましょう。
デッサンで描く楕円に図学はいらない
楕円とは円を潰したような形です(Fig.1)。楕円は図学やパースという観点から考えれば、こういうときにはこうなると言う厳密なルールがあります。
しかし、初学者がデッサンで楕円を描くだけなら、図学の知識や正確さまで求める必要はありません。
なぜなら、楕円一つであっても、図学として正確に扱えるようになるには、図学に対する深い理解がいるからです。デッサンの上達を目指している人は、図学をマスターしたいと思っているわけではありません。
自然なデッサンをしたい、そのために形を合わせたい、と思っているだけの人が多いでしょう。私ももちろんそうです。
そのような人が、デッサンで必要な他の修練を後回しにして図学に専念するのは本末転等です。いろいろなデッサンの技術や表現を身につけ、その先で図学が自分の表現に必要だと思ったときに、改めて図学を勉強すれば良いと思います。
そういうわけですから、初学者の方は完璧な楕円を描くことはとりあえず求めずに、簡単なポイントを抑える方法を知って大体の楕円を描けるようになりましょう。
デッサンに必要な楕円の知識
自然な楕円を描く方法は、楕円を四角で囲った時に、四角の辺と接する4点を見つけ、うち2点ずつを交差する線で結ぶ方法です(Fig.2)。
よく中心線を求める、と言う考え方をネットなどで見かけますが、あれは楕円が横や斜めになったときに応用が効きにくいのでお勧めしません。
私の経験上、四角の4辺に接する点を見つけるこの方法は、デッサンの最中にも簡単に行えます。そして2点を結ぶ線の角度を合わせることによって、自然に見える楕円を描きます。
図学的に正確である必要はありません、自然な楕円に見えればそれでOKです。
楕円を描いてみよう
トイレットペーパーまたは缶を描いてみましょう。
どんなものでもいいので、紙と鉛筆も準備してください。それではさっきのポイントを思い出してモチーフの形をとっていきます。
まず、楕円の中で一番飛び出していると思う4点を見つけます(Fig.3)。
次にその4点のうち、2点同士を交差するように直線で結びます(Fig.4)。四角い枠の縦横の比率と、交差した直線の角度をできるだけ正確に、画面の中に再現してください。
それらの位置が決まってから、楕円のカーブを描いていきます。カーブが尖るなど、うまく描けない場合は、四角い枠から楕円を削り出すつもりで形をあぶり出してみてください(Fig.5)。
隠れて見えない楕円は、見えている範囲で飛び出している点を見つけ、それと手前の楕円を結ぶ線の角度から位置を決めます(Fig.6)。
楕円の練習キット
デッサンのたびに楕円の形を確認していると時間がかかります。また、楕円の形をとるポイントとは別に、綺麗な曲線が引けないという問題もおきます。
そこで、楕円の練習キットを準備しました。画像を保存し、プリントするなどしてからなぞって練習してください。
繰り返していれば、楕円のカーブの感じが、感覚的にわかるようになってくるでしょう。これで変に尖った楕円を描いてしまうのを防いでください。