ジェスチャーは風のように、直接は目に見えません。そんなジェスチャーについて、「よく把握できない」とあなたは感じているかもしれません。
そんなあなたに、「書」がいいヒントになる可能性があります。
書は、その文字だけ見れば、筆跡が途切れている間はそのジェスチャーの跡が見えません。しかし、見えないだけで、ジェスチャーはその一文字を書く間、ずっと続いています。
このことが、ジェスチャーを掴むヒントになるのです。
線は途切れてもジェスチャーは続いている
書家の腕は、紙に筆が当たっている間も、離れている間も、ずっとその文字のジェスチャーを表現しています。
紙から筆が離れた時、書家は一休みしているわけではありません。腕が空中に上がったので、紙に筆が着かないだけです。そしてその間も、文字のジェスチャーはずっと続いています。
これは実際に臨書などをしてみると何となくわかります。
ずっと文字のジェスチャーを書いている
ひらがなの「い」を例にとって考えてみましょう。書家は「い」をまるで一筆で書くように、線が途切れている間も「い」を書いているかのように筆を運びます。
Fig.1を見てください。「い」を書く場合、まず、画面上のaの箇所に墨を含ませた筆先を降ろし、bに向かって筆を運びます。
bまで筆を運んだらそこで一瞬筆を止め、それからcへ向かって飛躍するかのように筆を浮かせて運び、cで再び筆を紙に降ろします。そしてそのまま、dに向かって筆を運び、そこで筆を止め、すっと紙から筆を離します。
ここで、bとcの間の点線eに注目してください。
画面上でbからcへと筆を運ぶ間、書家は一息ついるわけではありません。筆こそ紙から離れていますが、その動きはずっと「い」のジェスチャーを追っているのです。
デッサンでジェスチャーを描くのになかなか慣れないという方は、上述のように見えている結果以外の動きに注意してみてください。きっと、曖昧ながらもジェスチャーについて、すこし感覚がつかめるでしょう。