マッスを表現できるようになれば、デッサンに量感や存在感、迫力が出てきます。
マッスを表現するために、立体的に描く技法を使うこと、全体感を意識すること、細部を主張させないことでマッスのゴロンとした感じを表現することが可能です。
このテキストではマッスを捉える練習を紹介します。
1. 練習の内容
・制限時間:3時間
・目的:マッス(量感、塊感)をつかむ練習
・行動:モチーフの突出点を線で結び、大雑把なマッスを描く
テキスト「デッサンで一歩上達へ。量感を表すマッス」を読んでからこの練習を行ってください。
1-1. 画材の準備
・B3の画用紙
・HB〜4Bの鉛筆、または木炭
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画用紙をカルトンの上に設置します。描いている最中にずれてしまわないように、画鋲かクリップで固定してください。
1-2. モチーフの準備
一見ごちゃごちゃしていてボリュームのあるもの、もしくはそれらを集めてひとまとまりにしたものを準備します。
例えば、人物石膏像、箱やぬいぐるみなどを乗せた椅子、お皿やカップなどを積み重ねたものなどです。
そのモチーフを、模様のない白っぽい布ですっぽりと包み、テープや紐などで適当に留めてください。こうして、白っぽい少しボコボコしたモチーフを作ります。
1-3. 手順1
「マッス」を捉えるために、目立って飛び出た点(突出点)を捉えましょう。
あなたが作ったモチーフは細かい要素が覆われて見えないため、突出点が見つけやすくなっています。
まずは、はかり棒や透視枠を使い、突出点の平面的な位置を合わせていきます。あたりを取るような感じで薄く描いてください。
1-4. 手順2
次に、あたりをつけた突出点の中であなたに一番近いもの、つまり、最も手前に出ているものと、逆に一番遠くて奥に引っ込んでいるものを探します。
そして、手前の点を濃く、奥の点を薄くしておきましょう。なぜなら、紙が白い場合は濃い部分の方が手前に迫って見えやすいからです。
そのあとはその中間に位置する点を探し、色も先の2色の中間にします。
さらに、この3つの点の色の濃さを基準にして、他の点の位置と色を合わせてください。やや遠くにある点はやや薄く、やや手前にある点はやや濃くしていきます。
このようにして、あたりを取った突出点の奥行きを表してください。
1-5. 手順3
突出点を把握できたら、それらの点と点をごく薄い線で結んでいきます。そうすると、その線を輪郭とした面がいくつも出来上がります。
点と点を結ぶ線は必ず薄く描いていください。濃くすると後で邪魔になります。
次は、できた面に色をつけていきます。この面の色は目の前のモチーフの色に近いものにします。ひとつの面をひとつの「マッス」として描画していきましょう。(Fig.1)
全ての面に色がついたら、デッサンを離れて見てください。面で構成されたこのデッサンが、あなたが見ているモチーフのマッスを表していることになります。
2. 意識するポイント
ここでもっとも大事なのは、その面の奥行きを意識することです。面の三次元的な傾きを意識する感覚が、平面上で塊の感じ、つまりマッスを表すのに重要な見方となります。
はじめに描いた突出点の濃淡が、それを意識する参考になるはずです。
3. 応用練習1
今回出来上がったデッサンは、布のシワやたるみが描きこまれていないはずです。
応用練習では、面を作る代わりに実際に布のシワやたるみを描いてみましょう。ただし、モチーフのマッスは必ず意識してください。つまり、あなたが見ているモチーフの大きな塊感、突出点の位置関係、これは外してはいけません。
その塊感、立体の奥行き感を保ったまま、布の描写をしてみましょう。
4. 応用練習2
応用練習1がある程度できるようになったら、今度はモチーフの布を取り外して描いてみてください。
もっとも注意を向けるべきなのは、布をかけていた時に見えていた突出点の位置です。布を取り外せば、いろいろな要素に目が奪われると思いますが、それに惑わされず、まずは突出点の位置関係を合わせましょう。
それから、個々のモチーフを描写する際に、モチーフ全体を包むボリューム感を壊さないように気をつけます。
ちなみに、この応用練習2がうまく描ける頃には相当なデッサン力が付いています。数十枚デッサンしたぐらいではうまく描けないぐらい難易度が高い内容なので、地道にコツコツやっていきましょう。