ハッチングを使った女性の横顔の描き方|デッサン 

アンデシュ・ソーン

「ハッチングを使ってみたいけれどどう線を引けば良いのかわからない」「適当に線を引いているけど、それで良いのかな?」と迷う方もいると思います。

ハッチングが扱えると、スケッチを描くときに便利です。最初は難しく感じますが、立体と面の向きを意識することで、だんだんと的確な線の引き方がわかってきます。

今回はそんなハッチングについて説明します。

ハッチングとは

ハッチングの元の意味は、絵画や製図で「複数の平行な斜線を引く」ことです。現在ではもう少し幅広い意味、分野で使われています。

例えば、CADの分野で「ある範囲の中を模様で埋めること」であったり、絵では平行でなくとも「線を使って色や立体を暗示する方法」もハッチングと言います。

共通しているのは、線を使うことです。色を塗るのではなく、線で描くのがハッチングなのです。

ハッチングの利点は、キアロスクーロのように暗部にしっかり色をのせなくても良い点です。線を密集させるとで「陰影に感じる」ようにすれば良いので、塗りこまなくても良いのです。

そのため素早く描けるので、スケッチなどに有効です。

ケーテ・コルヴィッツ

ハッチングで横顔を描く

ハッチングをおこなときも、最初の形の合わせ方はキアロスクーロなどのデッサンの描き方と同じです。今回は女性の横顔をハッチングで描く想定です。

主に直線を使って、頭部などは曲線も使ってあたりをとります。直線を徐々に短く細かくしていくことで、遠目にみたときに曲線に見えるようにします。あたりを重ねるうちに、だんだんと描像が浮かび上がらせていきます。

形がだいたい取れてきたら、ハッチングを施します。ハッチングの際に気をつけるべきポイントは、立体の繋がりをイメージすることです。

例えば、以下の形と形の繋がりです。

  • 鼻と口の繋がり
  • 眉骨と目の間の繋がりの形
  • 頬骨と目の繋がり
  • 頬骨とほっぺたの繋がり

これらの「立体がある」ことをイメージしながら、それを繋いでいくように線を引いていきます。とにかく立体を想像することが大切です。わかりにくい場合は実際に自分で顔を触ってみましょう。その形に沿って線を引く感じです。

そして大きく形が変化するところ、形の面が変わるところで、線の角度を変えます。

以下の動画で実際にハッチングを行なっていますのでご覧ください。

動画による説明

動画をクローズアップして線を見ると、ほとんど直線でハッチングが行われています。なぜ直線かというと、その方が「こういう形」「こういう面の向きだ」と自分で解釈できるからです。

解釈ができていないと、ここまで直線ではっきりは引けません。ヌルヌルとそれぽい線を曖昧なまま描いてしまいます。

解釈できているということは、自分なりに形を見極めたという証拠です。その解釈が合っているか合っていないかは置いておいて、「ここの形はこうだ」と思うぐらいに見て観察する姿勢が大切なのです。これが後々観察力となっていきます。

そのため、ハッチングをする際は思い切って、「ここの形、面はこうなってる」と自信を持って直線で引きましょう。もちろん最初は間違いや失敗だらけだと思いますが、失敗を避けて曖昧な解釈で描くよりよほど観察力がつきます。

また、直線を短くして繋げると、曲線に見えます。直線によるハッチングだけでも、十分構造、立体感を描き出すことが可能です。

ハッチングで描画している作家に、ケーテ・コルヴィッツ(※1)やアンデシュ・ソーン (※2)がいます。2人とも立体をしっかり描画している画家なので、模写をするとハッチングと立体への理解が深まります。

参考と脚注

※1
ケーテ・シュミット・コルヴィッツ(ドイツ:Käthe Schmidt Kollwitz
1867─1945

※2
アンデシュ・ソーン(スウェーデン:Anders Leonard Zorn)
1860─1920