手を描くときに知っておくべきポイントは3つあります。これらは全て、手らしさを描くために必要な知識です。
- 手の構造を知る
- 関節の位置を知る
- 形に合わせて変形する指
手らしさは細部描写よりも、手の構造から現れます。そして手の構造は、手の機能によって決まっています。この点は手を手らしく描く上でかなり重要なので、しっかり頭に入れておいてください。
手の構造
手は何かを「持ちやすい」「握りやすい」構造をしています。これは手が「握る」「持つ」という動作に特化した器官だからです。その目的を果たすための形や機能になっています。
例えば、親指がなければどうでしょうか。さらには残りの4本の指がミトンのようにくっついていたら?
4本の指をくっつけた状態でものを握ってみればわかりますが、大きくて重いものだとかなり大変です。しかし、親指がそれを反対から支えてくれると、格段に持ちやすくなります。
また、親指は他の4本の指と正面から向かいあうことができます。そのため輪っかを作れるので、物が握りやすい、落としにくくなります。他の指同士は親指以外とは輪っかを作れません。
そうした握りやすい、持ちやすい状態を作るために、親指一本だけが他の指と違う位置に付いています。
こういった手の構造をしっかり意識することで、手らしさ、手独特の動きを捉えることができるようになります。
関節の位置
手を開いた時、手の関節はアーチ型になります。ただ面白いことに、手を握ると、関節の並びは横にほぼ揃います。これは、手を握った時に隙間ができないような位置に関節があるためと考えられます。
つまり、関節の位置もまた、「握る」「持つ」といった手らしさ、手の機能を表現するのに必要なのです。この時の「握る」「持つ」には、木のような大きな形ものだけでなく、砂や水なども含まれます。
例えば、手で水をすくう時に、指の間に隙間があるとうまくすくえません。本当に手というのはよくできているなと感心します。
ちなみに、第3関節は手の平の中に埋まっています。指の付け根と同じ位置ではないので、注意してください。
形に合わせて変形する指
親指以外の4本の指は握っているものの形に合わせて変形します。これも「握る」「持つ」という動作を行いやすくするためです。
例えば、まっすぐな棒状のものと、丸いもの、スマホのように四角いものでは、持った時に指の形が異なります。これはものの形に合わせて指が変形し、ものにフィトしているからです。そしてこれが手の大きな特徴です。
これがミトンのように指同士がくっついていると、スマホはうまく握れません。指が4本に別れていることによって、ものの形に合わせてしっかりと握ることができるのです。
3つのポイントを押さえて描写
以上の3つのポイントを押さえると、手を描く基本の練習は次のようなものが良いでしょう。
- 開いた状態の手
- 何かを持っている手
まずは、手を開いた状態で、関節の位置をおさえます。そしてそこに親指を加えましょう。指の関節を繋いだ時、そのアーチがどれぐらいきついか、これを関節の位置で確認します。関節のあたりをとったら外形を入れましょう。
指は、一度ミトンにようにつなげて描きます。そのあとに、指と指の隙間があれば描きます。指同士が密着している部分は、無理に隙間の輪郭を描かなくても良いです。そのほうが自然に見えることがよくあります。
外形を描き始める時に、指の付け根と第三関節の位置が横並びでないことを思い出してください。
こうして簡単に手のあたりを取ることができます。あとはあたりを細かくしてさらに描写を進めていきます。すると手らしくなってきます。
最初のあたりで、「持つ」「握る」その構造を意識していないと、なかなか手らしくなりません。そのため、3つのポイントをしっかり押さえてください。
- 手の構造を知る
- 関節の位置を知る
- 形に合わせて変形する指
開いた手を描けたら、何かを持っている手にトライしてみましょう。持つものによって手の形、関節の位置が変化することを確認しながら描いてみてください。
実際に描いてみる
手の可動範囲は内側の方が大きいです。これも、「握る」「持つ」に特化している手の構造からそうなります。甲の側にも、指は90度曲がります。しかし、自分の筋肉だけでは難しく、反対の手で押さえないと曲がりません。基本的に、内側に動く方が自然です。
手の力を抜くと、内側に丸まります。これが手の基本形です。そのため、あたりをとるときは、瓦のよう手にひらを少し丸めて描くと自然になります。そして、そこに指をつけます。
この時、中指と小指の長さに注意してください。中指が一番長く、小指が一番短いです。そしてこの指にソーセージのように丸みをつけます。これが手を単純化した描き方です。
または、ミトンのように指を揃えて描くと、手のまとまり感が出ます。小指に向かって先端が短くなるので、指の先端はアーチを描きます。
指を一本だけ伸ばす場合、他の指が自然な動きをするように、指を曲げることが多いです。自分で実際に描いたポーズをとってみて、不自然に力が入るポーズは自然ではない、と覚えておいてください。
ただし、怒りや痛いを表現する時は、不自然なポーズを意図的に使うことがあります。