DESSIN LABORATORY デッサンがうまくなるための練習法と観察のコツ
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画材を味方につけることがデッサン上達のコツ

上達するための最低条件は、実際にデッサンをすることです。そして実際に描く際は、必ず鉛筆や紙といった画材(猫画材・支持体)を使います。

画材があるおかげで、私たちが何かを表現するとき、作品を実際に目で捉えられるようになります。というのも、私たちは感覚で念じるだけでは作品を作ることができません。画材の力を借りることで、作品を生むことができるのです。

このことから、画家はリアリスト(現実主義者)と言えます。直感や想像は私たちがよく使うものですが、それ自体に作品を生み出す力はありません。作品を生み出すのは「思考」と「画材」とそれを扱う「体」です。そのため、画家は目に見える画材の特性と技術にも注意を払います。

もくじ
▪  画材からインスピレーションを得る
▪  画家には職人技術が必要
▪  職人と芸術家の違い
▪  芸術は作品ありき

画材からインスピレーションを得る

画家だけではなく、作り手が何かを造形するときは画材の力を使います。例えば画家は絵の具やキャンバス、彫刻家は粘土や大理石、陶芸家は土や釉薬(ゆうやく)といった素材の力を借りて造形します。その意味で、私たち作り手は0から作品を生み出すわけではなく、画材という存在の上に1から作品を作ります。

この画材は、先に物質として存在している点で、作り手の感覚やアイデアよりも絶対的で強い存在です。そのため、画材の特徴を無視して作り手の感覚を優先させるのはとても難しい作業になります。

また、画材によって残った手仕事の跡は、直感などで得た頭の中のイメージよりも、もっと多くの情報を画家に見せてくれます。そこから得られる発見は、頭の中にあるイメージよりもさらに、インスピレーションを広げる要素で溢れているのです。

というのも、私たちの頭の中の直感や想像は無限ではなく、一人の人間として経験した範囲の中のものです。それに対して、物質として実在している画材は作り手による意図的な加工に加えて、偶然起きた画材自体の変化も加わり、作り手が思いもしなかった様相を見せることがあります。

作り手は、その思いもよらなかった変化を通して経験を増やしていくことができるため、画材は作り手の直感や想像以上に、インスピレーションを与えてくれるのです。

ダ・ヴィンチ※1が著書の中で進めている、シミを利用してそこに絵を描く方法などもその一例です。

画材としての鉛筆

画家には職人技術が必要

デッサンで何かを表現するための最低条件は「描くことができる」ことです。つまり、画材を使ってデッサンするという職人技術がいるのです。

ここでいう職人技術とは、画材の特徴を知り、それとうまく同調しながら自分の表現を実現する技術、という程度の意味です。超絶技巧が必要という意味ではありません。

例えば、サッカー選手は足でボールを操る技術が必要です。それと同じで、画家には画材を扱う技術が必要です。

画家に関しては、個性を大切にするあまり職人技術は必要ないとする風潮もあります。しかし、、自分が引きたいと思ったところに引きたい線を引く、作りたい色を作って画面にそれを乗せるぐらいの技術は最低限必要です。

木炭を削るようす

職人と芸術家の違い

職人と芸術家の違いは、企画どおりのものを精確に作るか、チャンスがあれば企画以上のものを作ろうとするかという点です。

両者とも、まずはこういうものを作るという企画があり、それを高い質で表現しようとします。その後、職人は最後まで企画どおり忠実に仕事を行い、芸術家は途中で面白い発見があればそれを作品に取り込み、思わぬ収穫を得ようとします。

例えば、家庭的な料理を提供しようと考える料理人は、高級料理店で出てくるような味の料理が作れるとしても、客にその料理を出すことはありません。目指す完成品があらかじめ決まっています。

対して、芸術家はそこまで厳密にゴールを設定していません。偶然に現れた画材の様相から発見した効果や、オートマティスム※2(仏:automatisme)といった意識下の力を使い、自分のインスピレーションを超えた作品を作ろうとします。

そのため、芸術家は自分で自分の作品に驚いたりすることがあります。

また、職人と芸術家は状況に応じてお互いを行き来します。両者にはっきりとした線引きがあって、その一線は絶対に超えない、というわけではないのです。

先ほども述べたように、芸術家は職人技術を必要とします。職人も、新しい技術を生み出す瞬間は、芸術家のように素材から得られた偶然の様相に反応しています。

芸術は作品ありき

画家はリアリスト(現実主義)であるべきです。それは目の前に実際に現れているもの、つまり変化した画材が何を表現しているかという現実に注意を注ぐ必要があるからです。

芸術は形でも音でも、実際に現れるものです。あなたの頭の中のイメージやアイデアは、芸術の可能性を含んでいても、そのままでは芸術と呼べません。あなたの感性を評価する手段は目の前に存在している作品のみです。表現されていないものは評価しようがないからです。

つまり、芸術は作品ありきと言えます。そのため、画家は自分の頭の中と同等か、それ以上に実在している画材と作品をよく見るべきであり、その意味でリアリストになる必要があります。

参考と脚注

アラン『芸術の体系』光文社、2008年
レオナルド・ダ・ヴィンチ『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上』岩波文庫、1954年

※1
レオナルド・ダ・ヴィンチ(イタリア:Leonardo da Vinci
1452─1519
※2
心理学の分野では「筋肉性自動作用」と呼ばれる。美術分野ではシュルレアリスムの作家たちが使った手法のこと。彼らは、意識に上ってこない意識下の力を利用するために、眠ったまま話したり、高速で文字を書いたり、シミを利用したりした。

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