デッサン初心者にもできる、ヴァルールの練習

ヴァルール(色価)を合わせると、それだけで写実的に見えることがよくあります。

ヴァルールを合わせるためには色を比較して観察し、その色の差を再現します。このテキストでは単純なモチーフを使って、色を比較して再現する練習をします。

1. 練習の内容

・制限時間:1時間
・目的:ヴァルールを合わせる
・行動:モチーフ内の色の差を、画面に再現する

テキスト「ヴァルール(バルール)は写実デッサンのコツ」を読んでからこの練習を行ってください。

> ヴァルール(バルール)は写実デッサンのコツ

1-1. 画材の準備

・B3の画用紙
・2H〜4Bの鉛筆を1本ずつ

> デッサンでよく使われているおすすめの鉛筆

画用紙を机の上か、カルトンの上に設置します。描いている最中にずれてしまわないように、画鋲かクリップで固定してください。

> デッサン用のカルトン(画板)の特徴と使い方

1-2. モチーフの準備

モチーフには多面体を使います。面の数は最低でも8つのものにします。面の数が多いほど勉強になりますが、難易度も上がります。

モチーフの色は一色のものが理想です。逆に、ルービックキューブのように色数が多いもの、球体や円柱など面の境界が曖昧なものは適していません。

モチーフ例(石膏像ドットコムより引用)
モチーフ例(石膏像ドットコムより引用)

多面体がない場合は画用紙で自作するか、お菓子のパッケージなどを紙で包むなどして、モチーフとしてください。その際、パッケージの柄や向こうの色が透けて見えないように、画用紙など厚めの紙を使ってください。

1-3.  手順1

まず、モチーフの形を輪郭線で画用紙に描画します。

輪郭線は後からつける色の邪魔をしないように、薄く引きましょう。

1-4.  手順2

あなたから見えているモチーフの面の中で、もっとも明るい面ともっとも暗い面を見つけます。

見つけたら、その2つの面に色をつけていきます。この2色は、できるだけモチーフの色に近づけるようにします。

1-5.  手順3

手順2で作った2つの色の、間の色を順番に作っていきます。

まず、2つの色の、真ん中に当たる色から作っていきましょう。

モチーフを見てください。先の2色の真ん中に当たる色はどこの面ですか? それはもっとも明るい色と暗い色のちょうど中間ですか? 違うなら、どちらの色に寄っていますか?

これらを見極め、それを画面に再現しましょう。

この真ん中の色は、モチーフの色とそっくりにするよりも、もっとも明るい色ともっとも暗い色と比べて、どの程度色が違うのかに注意を払い、その差を再現します。

数値化して例えると、モチーフのもっとも明るい色を「1」、もっとも暗い色を「9」とします。そして、真ん中に当たる色が「6」ぐらいの暗さだと思ったら、画面内で「1:6:9」になるように、色の差を再現するのです。

1-6.  手順4

あとは同じ要領で、さらに中間の色を増やしていきます。

色数が増えるほどに、比較する色も増えていきます。

数字で例えると、はじめに作った暗い色が「9」、3つ目に作った色が「6」ならば、それらと比較して、4つ目の色が「7」と「8」のどちらなのかを見極めます。

この時、4つ目の色と、もっとも明るい「1」の色も比較すれば、ヴァルールがより正確になります。

2. トーン表を使って色を合わせる

ヴァルールを合わせる能力は練習を繰り返すことで上がっていきます。しかし、慣れないうちは手がかりがないと難しいと感じるかもしれません。

もし、あなたがこの練習を「難しいな」と感じたなら、テキスト「トーン扱う練習。デッサン用トーン表の作り方」を元にトーン表を作り、それを使って色を合わせてみてください。

> トーン扱う練習。デッサン用トーン表の作り方

3. 慣れたらモチーフを変える

1色のモチーフでヴァルールを合わせることに慣れてきたら、固有色(物体についている色)が2色以上あるモチーフでもヴァルールの練習をしてください。

その際、画材はモチーフの色に合わせて自由に選びましょう。

また、写真をモチーフとし、そのヴァルールを再現するのもいい練習になります。

この時の注意点として、まずは細かい部分にとらわれずに、大きな色面の関係を合わせるようにします。そして、徐々に細かい部分の色も合わせていきましょう。