きめの遠近を使って奥行きのあるデッサンを

ハッサム※1「The South Ledges, Appledore」

デッサンをしていて、「奥行きが描けない」「近くも遠くも同じように絵の中で同じようになってしまう」ということがあります。

このような場合は遠近の知識を使ってみましょう。遠近に対して少し意識するだけでも、あなたのデッサンにそれなりの影響が現れるはずです。

今回は、遠近の中でも使いやすい「きめ遠近」について解説します。

きめ遠近とは

きめとは、きめ細かい肌というように、肌や物の表面にある模様をいいます。 きめの密度が少しずつ高くなることで、物が遠くにあるような印象を与えます。ここではこれを「きめ遠近」と呼んでいます。

例えば、石や草を大地のきめと考えます。石を敷き詰めた道で、遠くへ向かうほど石の密度が高くなっていたり、だだっ広い芝生であなたから離れるほど草と草の密度が高くなったりしているのがきめ遠近です。

枠aよりも枠bの中の石の方が密度が高い(密集している)

また、きめやパターンは大きくても小さくても、距離や奥行きの印象を与えます。例えば、建築物のような大きなものでも、砂利のように小さなものでも「きめ遠近」は生まれます。

線遠近法より使いやすい

遠近法といえば線遠近法が有名です。しかし、線遠近法が使えるケースは限定されます。例えば、街中を描くのには向いていますが、風景画ではあまり使えません。これは街中は直線が多く、風景画の場合はモチーフの多くが曲線で形づくられているためです。

線遠近法は数学的に正しく求めることができますが、扱える場面が限られています。それに比べてきめ遠近は、数学的な精度の高さを求めるのは難しいですが、モチーフの形に関係なく気軽に使うことができます。

きめ遠近が適応できないもの

きめ遠近は普段見られるほとんどのものに使うことができます。しかし大気、つまり空に関しては難しくなります。空単体ではきめやパターンが見えないためです。ただし、雲がいくつかある場合はそれが手がかりになることもあります。

そのため、雲もないような空の奥行きを描きたいときはきめ遠近ではなく、大気遠近法を使う方が効果があります。

それ以外では、砂、水(の表面)、建物、動物など、表面にきめやパターンがあるものにはなんでも用いることができます。

きめの見られない空

まとめ

最後に、きめ遠近の特徴をまとめておきます。

  • きめの密度が高くなることで遠くにあるような印象を与える
  • きめの配置は石のようにランダムでもよい
  • きめは直線で結ばれる必要がない(線遠近法が適応できなくてもよい)
  • きめ遠近はほとんどのものに見られる
  • 数学的な精度を求めるのは難しい
  • きめは建物のように大きくても、砂のように小さくてもよい
  • 大気だけの場合にはきめ遠近は使えない

> きめの遠近をマスターするための練習デッサン

参考と脚注

ジェームズ J.ギブソン『視覚ワールドの知覚』新曜社、2011年

※1
フレデリック・チャイルド・ハッサム(アメリカ:Frederick Childe Hassam
1859─1935