4つの色の扱い方を知ればデッサンが上達する

デッサンにおいて、色彩には大きく4つの役割があります。

あなたはどんな色づかいを好むのか? あなたの作品のコンセプトに合う色の使い方はどれか? これを自覚するだけで、デッサンのクオリティはぐんと上がります。

ここではその4つに「自然な」「象徴的」「調和的」「純粋な」と名付けています。それぞれどのような役割を果たしているのかを見ていきましょう。ここでは分かりやすく説明するために有彩色を例に挙げていますが、モノクロでデッサンをする場合にも応用できます。

もし、あなたが一通り説明を見て「どれを使えばいいんだろう?」と思ったら、 「調和的」な色づかいから意識して使ってください。これは写実的なデッサンで使われる基本的な色づかいです。

自然な色づかい

「自然な」色づかいとは文字通り、見たままの自然な色を再現することです。

あなたは「普通はこの色づかいだよね」と思うかもしれませんが、実はこの色づかいはそう多くありません。屋外の自然光を大切にした印象派の画家であっても、決して自然な色を用いているわけではなく、印象に即した色を使うことが多いようです。

自然な色があまりデッサンに用いられない理由は、ありのままの色を自然だと感じるとは限らないからです。

例えば、私たちは自然を美しいと感じることがよくありますが、実際の自然の色はそんなに綺麗ではありません。人が手を入れていない山の中の樹木を見れば、美しい自然の印象からはほど遠い色がたくさんあります。

強い緑と枯れて腐ったような茶色が入り乱れた葉の色、蜘蛛の巣や虫の糞と死骸の色は私たちのパレットの上にはない色です。そのような色彩を、何のためらいも考えもなしに、忠実に再現する人はそうそういません。

つまり、自然な色づかいをするということは、綺麗な色づかいをしないということです。これは私たちの理想の自然観に少し反しているため、明確なコンセプトがないと選ばない色づかいです。

象徴的な色づかい

「象徴的」な色づかいの代表例は、子供が使う色と、宗教画です。これは、色を言葉のように何かを意味するものとして扱う方法です。

例えば、子供は空を青く、草を緑で、そして川を水色で描くことがよくあります。しかし、実際に彼らが見た色は、雨が降りそうな灰色の空、実は緑以外の色もたくさんある草、そして透明の川かもしれません。

それでも、青い空、緑の草、水色の川を描くのは、青が空を、緑が草を、水色が川を象徴する色だからです。

また、中世の宗教画は特定の人物を描く際、色などが厳密に決められていたようです。例えば、赤い衣服の上に青色のマントを纏っているのは聖母マリア、といった具合です。

調和的な色づかい

「調和的」な色づかいは、統一感のある画面を作るために、色を意図的にコントロールする際に使われます。キアロスクーロなどがよい例です。

> 「デッサン上達にはキアロスクーロ(明暗法)」

キアロスクーロは整理された光と陰影によって、画面内の調和を生み出します。また、劇的な効果、形態、立体を、光と陰影の色調をベースに表現します。

クールベ※1など自然主義と呼ばれる画家たちは、この調和的な色づかいを基礎技術として持ちながら、上述した自然な色づかいも取り入れ、より日常的な光景を再現しようとしたと言えます。

クールベ「出会い」

純粋な色づかい

「純粋な」色づかいとは、色が人に与える心理的効果を利用する方法です。

例えば、黄色はこちらに迫って見え、青は奥にあるように見えると言った効果を使い、白黒の明暗を使わずに、モチーフの形態や奥行きを表現します。ターナー※2はこの効果を使って見事な風景画を描きました。

ターナー「月光の中、積み込みをする石炭船」

また、形態や空間だけでなく、感情などの内面的なイメージを表現する時にも使われる色づかいです。

この純粋な色づかいは、象徴的な色づかいと似ていると思うかもしれませんが全くの別物です。象徴的な色づかいは、色がものの意味を表すのに対し、純粋な色づかいは色の持つ視覚的、心理的効果を使います。

参考と脚注

ハーバード・リード『芸術の意味』みすず書房、1966年

※1
ギュスターヴ・クールベ(フランス:Gustave Courbet
1819─1877

※2
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(イギリス:Joseph Mallord William Turner
1775─1851