木炭デッサンで使う画用木炭の特性と種類

トーマス・アンシュッツ※1の木炭デッサン

木炭デッサンと言っても、画材屋に行けばたくさんの種類があります。どれを選べばいいのか迷ってしまう人も少なくないでしょう。

初学者はとりあえずヤナギの木炭から始めましょう。ヤナギは柔らかく、色も乗りやすいバランスの良い木炭です。

それに慣れたら、ここで紹介している木炭の特徴を参考にしていろいろな木炭を試してみてください。

画用木炭とは

画用木炭は絵を描くために作られた描画専用の木炭です。木材を窯で焼いて炭化させてあり、その炭で描画していきます。

画用木炭の原材料は描画に適した木材が選ばれています。絵を描くときは原則、画材として売られている木炭を使用してください。バーベキュー用の炭などは使いません。

画用木炭は炭化したあとも木材の形を保っており、チョークやパステルと同じように描画に使う部分がむき出しになっています。

ただ、木炭はその中心に「芯」があります。この芯で描画することは基本的にありません。そのため、描画する前に芯を抜くのが一般的です。

> デッサンに使う画用木炭の準備と手順|芯抜き

画用木炭の特性とメリット

1|画面上に簡単に色を乗せることができ、また簡単に取ることができる。ただし、画面上から完全に取り除くのは難しく、少し残る。

2|画面上の広範囲に素早く色を乗せることができる。そのため大きな面や構造を描画することに集中しやすい。

3|濃淡の幅が広く出せるため、コントラストの効果を存分に引き出せる。

4|扱い方によって粒子の大きさを幅広くコントロールできるため、マチエールの幅を作りやすい。

これらの効果のうち、1と3は他の描画材でもあまり見られない効果です。

このような画用木炭と似た効果が得られる描画材に油絵の具があります。そのため、美術大学の油絵専攻を目指す学生は素描をする際、鉛筆よりも画用木炭を勧められることがあります。

この2つは描画材の効果が似ているので、画用木炭で下絵を練り、それを油絵の具で制作すると、描画材の特性の差による問題が起こりにくいというメリットがあります。

画用木炭の種類

以下にあげるのは日本で手に入る画用木炭の種類と特徴です。どの木材を使うかによって木炭の色や描き心地が変わってきます。(画材図鑑:伊研の画用木炭より引用)

ヤナギ炭:軟らかくて濃いバランスの良い代表的な炭

高熱ヤナギ炭:高熱処理をしたシャープさが加わった炭

クワ炭:やや腰のあるしっとりとした濃い炭

ハンノキ炭:やや乾いた感じの淡色の炭

カバノキ炭:しっかりと手応えのある淡い炭

クリ炭:やや硬い乾いた炭

ウコギ炭:軟らかくて軽い淡色の炭

トチノキ炭:ねばりのある濃い炭

シナノキ炭:きめ細かい柔らかな炭

ホオノキ炭:硬くシャープな淡い炭

ミヅキ炭:細く硬いシャープな淡い炭

伊研の画用木炭

この中で初学者が持っておくとよいのは「ヤナギ炭」です。画塾の学生や美術大学の学生がよく使用しているものに「伊研の画用木炭 No.200(ヤナギ)」と「伊研の画用木炭 No.360(ヤナギ)」があります。

「No.200」は1本入りで太い木炭です。黒がしっかり出て、少しカラッとしている印象があります。

「No.360」は3本入りで太さは中ぐらいです。しっとりした感じがあり、粒子を乗せやすく取りやすいため、扱いやすい木炭です。端に銀紙が巻き付いているので、それを剥がしてから使います。

初めて画用木炭を使用する場合はこの2つを揃えれば特に問題はありません。さらに表現の幅を広げたくなったときに、他のものを買い足していきましょう。

伊研以外にも画用木炭を販売しているメーカーがあります。画材屋では複数のメーカーを取り扱っている場合が多いでそこで見ることができます。同じ木材の種類でも、メーカーによって描き心地が異なりますので、いろいろ試してみてください。

参考と脚注

株式会社伊研「伊研の画用木炭」(閲覧日:2018年3月)

※1
トーマス・ポロック・アンシュッツ(アメリカ:Thomas Pollock Anshutz
1851─1912